研究課題/領域番号 |
24700296
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
加藤 有己 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (10511280)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | RNA間相互作用 / RNA2次構造 / RNA構造アラインメント / 整数計画法 / 国際情報交換 / デンマーク |
研究概要 |
生体内の遺伝子の発現制御に関わるRNA間の相互作用が注目を集めている。これまで計算機を用いた相互作用予測に関する研究がいくつか行われてきたが、比較的単純な正準塩基対から成る2次構造に基づく予測が多く、予測精度が良いとは言えない。高精度の相互作用予測および高信頼度のネットワーク推定のためには、2次構造以上のより精緻な情報(非正準塩基対など)を考慮して解析することが必要であると考えられる。 今年度では、これまで研究代表者が中心的な役割を果たして取り組んできた超高速RNA間相互作用予測ツールRactIP、および超高速RNA2次構造予測ツールIPknotを実装したWebサーバーを完成させた。なお、このWebツールは計算機実験で世界最速レベルの高速性を達成することを示しており、生命科学系で主要な国際論文誌の1つであるNucleic Acids Researchにその内容を論文にまとめ、発表した。 また、高精度なRNA間相互作用予測を行うためには、異なる塩基配列が共有する進化の過程での保存性が重要なヒントを与えると考えられているため、2本以上の複数のRNA配列同士で、各配列が取り得る構造を考慮しながら同時に配列間の対応付けをとる、いわゆる同時構造アラインメント問題に対して、効率の良い計算手法DAFSを開発した。既存の構造アラインメントデータ上で網羅的に計算機実験を行った結果、DAFSの予測精度は既存の手法と比べて同等以上、そしてより高速に動作することを実証した。この結果は生命情報科学系で主要な国際論文誌Bioinformaticsに発表した。 さらに、先述のRNA間相互作用予測ツールRactIPを、相互作用に関与しやすい確率を表すアクセシビリティを考慮するようにモデルの拡張を行い、最新の既知相互作用データを基に、プログラムのパラメータチューニングを行ったところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、比較配列情報を考慮した同時RNA2次構造アラインメントモデル、および、これまで研究代表者らが開発したRNA間相互作用予測モデルに、より精緻な情報であるアクセシビリティを導入した改良版ともいうべきモデルのプロトタイプを開発した。これらの技術は、本研究の目的である高精度のRNA間相互作用予測を行うためには必要不可欠である。したがって、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず初めに、改良版RNA間相互作用予測モデルの相互作用識別能力を計算機実験のみならず生物学的実験で評価するため、国内の他研究機関に属する生物系研究室の協力を得て、ウェット実験により開発手法の予測性能を検証する予定である。そして、実験結果をフィードバックしモデルパラメータの調節も視野に入れながら、アクセシビリティを考慮した相互作用予測ツールを完成させる予定である。 一方、ゲノムワイドなRNA配列情報解析は網羅的に相互作用予測を行う上で極めて重要な足掛かりとなる。現在、デンマークの研究機関と共同してゲノム網羅的なRNA配列解析法の開発を進めており、このプロジェクトを完成させることで、大規模な相互作用予測を行うことができると期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
申請時に開発モデルのパラメータを調節する際に必要と考えられていた計算機の購入だが、予想よりも開発手法の計算時間が短かったため、購入を見送って今年度では未使用額が生じた。 したがって、次年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画は次の通りである。主たる直接経費として、新たなプログラム作成を円滑に行う開発環境を備えた計算機1台、および関連するソフトウェアを物品費として計上し、研究調査、国内共同研究者との打ち合わせ、成果発表のための国内旅費(本学東京間、計4回)、国際共同研究、成果発表のための外国旅費(欧州、計2回)、それらに付随する学会参加費を計上した。
|