研究課題/領域番号 |
24700296
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
加藤 有己 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (10511280)
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キーワード | RNA間相互作用 / アクセシビリティ / 無細胞系実験 / 国際情報交換 / デンマーク |
研究概要 |
生体内の遺伝子の発現制御に関わるRNA間の相互作用が注目を集めている。これまで計算機を用いた相互作用予測に関する研究がいくつか行われてきたが、比較的単純な正準塩基対から成る2次構造に基づく予測が多く、利用可能なデータが限定されていたことも相まって、予測精度が必ずしも良いとは言えない。高精度の相互作用予測および高信頼度の分子間ネットワーク推定のためには、計算速度を犠牲にすることなく、2次構造の他にも利用可能な情報を考慮して解析することが必要であると考えられる。 今年度では、フィージビリティとゲノムワイドをキーワードに掲げ、2つのアプローチの開発を行った。まず、これまで我々が開発した高速RNA間相互作用予測法の改良を行った。具体的に、相互作用に関与しやすい確率を表すアクセシビリティを数理モデルに組み込んだ。以前の発表時に使用したものよりも網羅的な既知結合データを用いて予測性能評価を行った結果、アクセシビリティを導入した他の最新手法と比較して、改良手法の予測精度が最も高いことを示した。さらに、新規の相互作用データと相互作用しないとされるデータを無細胞系実験で取得し、正例、負例を併せたデータセットで相互作用の有無の判定能力を検証した結果、提案手法は他の手法と比べ良い識別能力をあげることに成功した。 次に、ゲノムワイドな解析においては、いかに速く正確にRNA領域を発見し、比較解析できるかが重要である。そこで、2次構造情報を表す確率分布の粗視化により、従来よりも高速にRNA構造を比較するモデルを開発した。現在、網羅的な評価により有効性の検証や問題点の検出を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、我々がこれまで開発したRNA間相互作用予測モデルに、各分子内部の部分領域で塩基対を形成しない確率を表すアクセシビリティを導入することで、改良版ともいうべき数理的予測モデルを開発した。さらに、従来よりも網羅的なデータを使って予測性能を評価し、良い結果を得ることができた。本研究の目的である高速高精度のRNA間相互作用予測法を開発するという意味で、研究はおおむね順調に進展しているとの認識である。
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今後の研究の推進方策 |
現在相互作用の有無を判定するために使用している新規の正例、負例のデータは数が少ない。従って、国内の共同研究者の協力を得て無細胞系実験を追加し、より詳細な提案手法の性能評価を行いたい。 一方、ゲノムワイドなRNA配列情報解析は、網羅的な相互作用予測を行い、ひいては分子間ネットワーク推定のために重要な技術である。現在、デンマークの研究者と共同して技術開発を行っているが、このプロジェクトを完成させることを次の目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
高性能な計算機の購入を予定していたが、開発プログラムの工夫により、通常性能程度の計算機を購入するだけで、性能評価などの実験を行うことができ、研究を遂行することができた。そのため次年度使用額が生じた。 次年度使用額と翌年度分を合わせた使用計画は以下の通りである。 主たる直接経費として、新たなプログラム作成を円滑に行う開発環境を備えた計算機1台、およびサーバー用計算機1台を物品費として計上し、研究調査、国内共同研究者との打ち合わせ、成果発表のための国内旅費(本学東京間、計4回)、国際共同研究、成果発表のための外国旅費(欧州、豪州の計2回)、それらに付随する学会参加費と論文投稿料を計上した。
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