本年度においては、主として、神経活動データ解析を行うための方法論の抜本的な開発を行った。特にこれまで研究してきた情報幾何学的な方法に必ずしも限定せずに、それを含む広い意味での「応用現代幾何学」の手法を用いることで、方法論的ブレークスルーを目指した。高度に抽象的な幾何学を積極的に使ったデータ解析手法は珍しいものであり、このような野心的な挑戦が新しいイノベーションを生み出すと期待するものである。以下、この萌芽的な成果について2点説明を行う。1つめの成果としては、グラフのHodge-小平分解を用いたものであり、ネットワークの再起結合、すなわち、穴の数に着目することで、ネットワーク構造の特徴づけを行う手法を開発した。特に我々は、学習ルールが異なるニューラルネットワークに対して、時間発展の結果生成されたネットワーク構造が異なることを発見した。この成果は来年度以降出版される予定である。2つ目の成果としては、Euler解析を用いた画像中のおはじき数のカウント、あるいは、タッチパネルへのタッチ数のカウントを行う並列アルゴリズムの開発がある。トポロジーの数学の厳密な成果に基づいているため、タッチ数などを近似的に数えるのではなく、多くのニューロンによって分散されて計算されるものの、最終的には必ず正確に数えられるという特徴がある。なお、並列化して神経回路による実装を行ったのは、将来的な大規模化を考慮した高速化を行うためであった。この成果は、オープンアクセスの電子ジャーナルIEEE Accessにおいて出版された。
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