研究課題/領域番号 |
24700314
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
倉林 伸博 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40581658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Nfil3 / 神経保護 / 神経変性 / ALS |
研究概要 |
認知・記憶・運動系の制御などの高次脳機能は、中枢神経系の神経細胞によって担われている。したがって、生涯にわたって神経細胞が健全に維持されることは、高次脳機能の維持に必要不可欠である。神経細胞は基本的には自己複製しないため、神経細胞が機能的・構造的に維持されるには、自己を守るための強固な保護システムが必要である。申請者らは、転写因子Nfil3が神経細胞を保護する役割を担い、Nfil3の発現が神経変性を抑制することを見出した。本研究では、Nfil3シグナリングの解析を通じて、Nfil3を基点とした神経保護システムの全容に迫ることを目的とする。本年度は、Nfil3の下流で作用する遺伝子群を探索した。具体的には、Nfil3 Tgマウスの中枢神経系を用いたマイクロアレイ解析を行い、Tgマウスにおいて発現量が変化する遺伝子を数多く同定した。また、これと並行してNfil3の下流候補と考えられるPer2の解析を実施した。その結果、培養神経細胞を神経毒で刺激した際に、Per2の発現レベルが下がることを見出した。このことから、神経毒に対する神経保護システムにおいて、Per2の発現低下が重要な役割を果たしている可能性が考えられた。 さらに本研究では、Nfil3の発現を誘導するシグナルの解明を目指す。従来、SREBPという分子が低コレステロール状態になると活性化し、コレステロール合成に関わる遺伝子群の転写を誘導することが知られる。これまでの研究において申請者らは、活性化型SERBPの発現によってNfil3の発現が促進することを報告した。本年度は、スタチン系薬剤やACAT酵素の阻害剤を培養神経細胞に投与し、低コレステロール状態にすると、SREBPの活性化に伴ってNfil3の発現が上昇することを見出した。この知見は、低コレステロール状態がNfil3を介して神経保護効果をもたらす可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初の研究計画に掲げたように、Nfil3トランスジェニックマウスの中枢神経系を用いたマイクロアレイ解析を行った。さらに、Nfil3の下流候補であるPer2においては、培養神経細胞への細胞毒刺激により発現レベルが低下することを明らかにした。これは、Per2の発現制御が神経保護システムに重要な役割を果たす可能性を示すものであり、当初の計画通りに研究が進行していると判断できる。また、Nfil3の発現を誘導するシグナルの解明においては、培養神経細胞を低コレステロール状態にするとNfil3が発現上昇することを見出した。今後のさらなる研究によって、本研究の目的であるNfil3の発現制御メカニズムの解明につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
先の欄で述べたように、現在までの研究進捗状況は概ね順調である。そのため、今後も当初の研究計画に基づいて研究を推し進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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