研究課題/領域番号 |
24700315
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成塚 裕美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00511388)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 嗅球 / 神経新生 / 抑制性介在ニューロン |
研究概要 |
本研究では、成体マウスで新生される嗅球新生顆粒細胞の入力依存的な組み込みメカニズムを明らかにする為に、新生顆粒細胞が投射ニューロンの細胞体に形成するperisomatic-targeting spine(以下、Pt spine)に着目し、研究を行っている。当該年度は、Pt spineにシナプスが形成されるかをシナプスマーカーを用いて解析した。まず、投射ニューロンから新生顆粒細胞のPt spineへ興奮性のシナプスが形成されているかを、ポスト側の興奮性シナプスマーカーであるPSD95の抗体を用いて調べた。その結果、新生顆粒細胞が生まれて10日の時点では約60%のPt spineが、4週の時点では90%の以上のPt spineがPSD95を発現していた。次に、新生顆粒細胞のPt spineから投射ニューロンへ抑制性のシナプスが形成されているかを調べる為に、プレ側の抑制性シナプスマーカーであるGAD65に対する抗体を用いて調べた。その結果、新生顆粒細胞が生まれて10日の時点では約20%のPt spineが、4週の時点では約80%のPt spineがGAD65を発現していた。以上の結果から、新生顆粒細胞はPt spineにおいて投射ニューロンの細胞体とシナプスを形成していることが明らかになった。 これまでの先行研究では、新生顆粒細胞のシナプス形成は、主に投射ニューロンの樹状突起に作られるものが着目されてきたが、本研究において、新生顆粒細胞は投射ニューロンの細胞体との間にもシナプスを形成していることが明らかになった。 Pt spineが投射ニューロンの細胞体とシナプスを形成することが確認できたことから、このPt spienを組み込みの指標とすることができる。次の段階として、このPt spineに着目し、新生顆粒細胞の嗅球回路への組み込みメカニズムを調べることが可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、大きく分けて2つの目的がある。1つ目は、「Ptスパインのシナプス形成をシナプスマーカー分子を用いて確認する」ことであり、2つ目は、「新生顆粒細胞は入力に依存して組み込まれるのかという点について、Ptスパインを指標に明らかにする」ことである。当該年度は、シナプスマーカーを用いた解析により、Pt spineが投射ニューロンの細胞体から興奮性のシナプス入力を受け取り、また投射ニューロンの細胞体へ抑制性のシナプス出力を出していることを明らかにしたことから、1つ目の目的が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、嗅覚入力を模した投射ニューロンの発火を効率的に引き起こす為に、optogeneticsを用いた嗅球投射ニューロンの活性化の手法を確立し、実験を進める。 嗅球の投射ニューロンである僧帽細胞や房飾細胞がチャネルロドプシンを発現するマウスを準備する。まず、光刺激によって投射ニューロンの発火が引き起こせるかを電気生理学的手法を用いて確認するとともに、匂い入力を模した発火活動を引き起こすのに適した光刺激のパラメーターを決める。次に、このマウスの嗅球新生顆粒細胞をウィルスによって蛍光標識し、光刺激を用いて投射ニューロンを活性化する。新生顆粒細胞が活動依存的に既存の嗅球神経回路に組み込まれるかという点について、形態観察といった解剖学的な手法を用いて調べる予定である。 さらに、光刺激と報酬や電気ショックなどを組み合わせた関連学習を動物に行わせ、新生顆粒細胞が学習依存的に組み込まれるかという点についても調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
パイロット実験の数が、当初計画していた回数よりも少なくて済んだ為、抗体の購入量が抑えられ、次年度に使用する予定の研究費が生じた。次年度には、チャネルロドプシンを用いたoptogenetics関連の消耗品や機器が多数必要になる為、その購入に使用する予定である。また、次年度には解析するサンプル数が増える為、抗体の購入にも研究費を使用する予定である。
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