研究課題/領域番号 |
24700322
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻野 なつ子 金沢大学, 医学系, 助教 (40432166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | orexin / sleep / preoptic area / DREADD / hM3Dq / hM4Di |
研究概要 |
本研究は、睡眠中枢の視索前野のGABA作動性神経の活動を人為的に操作し、GABA作動性神経活動が、睡眠覚醒へ与える影響を解析することを目的としている。特に、睡眠覚醒調節に重要なオレキシン神経に与える影響を解析し、睡眠調節機構の一端を解明する。 変異型ムスカリン性受容体のhM3Dqを視索前野のGABA神経特異的に発現させると、CNOの投与によりGABA神経を興奮させることが可能である。このマウスの脳波、筋電図を測定し、視索前野のGABA神経活動の興奮が、睡眠に与える影響を解析した。また、オレキシン神経の神経活動マーカーを測定し、オレキシン神経活動に与える影響を解析した。さらに、視索前野GABA神経にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させ、光によりGABA神経を刺激したときの、オレキシン神経活動を記録し、GABA神経からの入力がオレキシン神経活動に与える効果を検討した。 初めに視索前野からのGABA神経の神経軸索がオレキシン神経周辺に存在することを確認した。また脳スライスを用いて、GABA神経のChR2発現終末を光刺激すると、オレキシン神経の活動電位発火頻度が減少することを確認した。刺激からIPSCの発生までの潜時は約5msでGABA神経終末はオレキシン神経に直接シナプスを形成していると考えられた。マウス個体を用いて、視索前野GABA神経を光刺激すると、オレキシン神経の神経活動のマーカーであるcfosの発現が減少した。次に、CNO投与により、GABA神経を興奮させたときの睡眠パターンを解析した。CNOの暗期投与により、覚醒時間が有意に減少した。一方NREM睡眠が有意に減少した。以上より、生体内で視索前野のGABA神経の活性化はオレキシン神経抑制に関与しており、睡眠亢進に関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験はほぼ計画通り進行しており、視索前野のGABA作動性神経特異的な操作が睡眠覚醒に与える影響を解析できている。今年度は引き続き、視索前野のGABA作動性神経が睡眠覚醒に与える影響について研究を進める予定である。25年度は視索前野のGABA作動性神経を抑制した場合の、睡眠覚醒状態およびオレキシン神経活動に与える影響を解析する。これまでの手法が適切に機能しているため、同様の手法を用いた25年度の研究も順調に進行する可能性が高いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
hM4Di 遺伝子を持つウイルスを作成し、hM3Dq と同様の手法で視索前野GABA 神経特異的に発現させる。hM4Di はCNO により活性化され、神経活動を抑制するため、GABA 神経を人為的に抑制できる。GABA 神経活動をCNO 投与により抑制し、24 年度と同様に暗期と明期で睡眠覚醒が変化するか解析する。また、視索前野GABA 神経の活動を抑制したときのオレキシン神経活動を同様に解析し、覚醒領域に与える影響も解析する。以上の結果をまとめ発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬、消耗品類費(100万円)実験動物費(10万円)成果発表費(30万円)動物飼育維持費(20万円)を予定している。 ・試薬および消耗品類はマウスの睡眠覚醒測定に必要な電極類および試薬類と、電気生理学的解析に必要な試薬、および神経活動や受容体の発現を確かめる際に必要な組織科学的解析に必要な試薬類等である。 ・実験動物購入費は繁殖用マウスの購入に必要な費用である。 ・成果発表は、成果発表に必要な旅費や学会参加費である。 ・動物飼育維持費は、実験に用いるマウスの飼育維持費である。
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