平成25年度は、前年度に得られた候補分子(側枝形成に関与するリガンドの探索を行い、側枝形成時期の橋核で強く発現する分子をアレイ解析から得た)に加えて、文献データより同様に橋核で側枝形成時期に発現の高い分子、さらに、公共アレイデータより橋核発生異常マウスで発現の減少する分子(いずれも細胞外分子)をリガンド候補とし、それに対応する受容体のリストを作成した。その中で、特に皮質脊髄路神経細胞で発現の高い101の受容体候補分子それぞれに対して5種類のノックダウンベクターを設計し、網羅的なノックダウンスクリーニングを実行した。具体的には、皮質脊髄路神経細胞の生まれる胎生13日マウス大脳皮質に子宮内電気穿孔法にて、ノックダウンベクターと蛍光蛋白質発現ベクターを導入し、生後2日目に主軸索から橋核へ投射する軸索側枝の伸長度を数値化し評価した。その結果、側枝形成が阻害された10受容体、促進された4受容体を得た。ノックダウンによって側枝形成が阻害された受容体には、軸索誘導因子、接着因子に対する受容体や、機能未知のもの等が含まれ、中でも橋核でリガンドの発現が確認されている受容体は側枝形成誘導に関与している可能性が高いと考えられた。また、皮質下に投射する5層神経細胞は運動野、体性感覚野、視覚野といった領野ごとに特異的な側枝形成と側枝の刈り込み現象によって独自の神経回路を形成することが知られている。ノックダウンによって側枝形成が促進された受容体の中には大脳皮質領野特異的な発現様式を示すものが含まれており、領野特異的な軸索側枝の刈り込みや投射パターン制御への関与が示唆される。生体内でのアッセイに基づき、今までほとんど不明であった、側枝形成に関与する受容体について新たに得ることが出来たことは、リガンドを含めてそのシグナル機構を解く上で非常に意義深い。
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