研究概要 |
in vivo蛋白質-RNA相互作用検出法、HITS-CLIPにより、神経幹細胞に強く発現するRNA結合蛋白質Musashi1(Msi1)の胎生期マウス脳におけるMsi1-RNA相互作用のゲノムマッピングを行い、Msi1のRNA制御メカニズムおよび生体内における役割に迫ることを目的とした。In vivoにおけるMsi1と相互作用している標的RNAを同定するため、UV照射したマウス胎児脳の抽出液よりMsi1を認識する抗体を用いMsi1欠損マウスをネガティブコントロールとした、HITS-CLIPライブラリーを次世代シークエンサーにより解読した。得られた配列情報をバイオインフォマティクス解析により、再現性、信頼性の高いMsi1-RNA相互作用部位、約16,000部位の同定に成功した。これらの結合部位は、特に3’非翻訳領域に多く存在する一方で、Codingエクソン、イントロンやintergenic領域といった様々な部位にMsi1結合部位がみられた。さらに、CIMS(Crosslinking-induced mutation site)解析を合わせ1塩基解像度レベルでMsi1-RNAの相互作用部位を検出した結果、従来in vitroで明らかとなった結合配列と同等な配列情報が得られた。さらに、標的遺伝子群を1000近く同定し、これらが前脳発生に重要な分子群と関連性が強いことがわかった。分子機能については、従来翻訳抑制因子としてその分子メカニズムが明らかとなっており、本研究において多くの神経発生制御に関わる新規標的遺伝子について翻訳抑制機能を有する事が確かめられた。また、従来の分子機能に加え、様々な領域におけるMsi1のHITS-CLIPマッピングにより、従来の翻訳抑制制御だけでなく新たに3つの新規機能を持つ事を明らかにし、それぞれの機能がMsi1-RNA相互作用依存的であり、新規のMsi1の直接RNA制御メカニズムとしてMsi1欠損マウス、初代培養系を用いることで証明した。
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