中枢神経「システム」が適切に機能することとその構成要素である神経細胞、神経線維や神経結合が豊富にあることは等価ではないため、臨床試験で物理的な神経線維の数や長さが元通りになったとしても”てんかん”や不随意運動、種々の精神疾患などが誘発されることが予想される。この問題に対処するには「中枢神経が機能再生する」という現象を正確に理解しなければならない。我々は、人間においても脳が損傷を受けた後に損傷を免れた部位が失った機能を肩代わりすることで「自然に」ある程度の機能回復が起こりリハビリテーションなどでそれがさらに促進されるという知見に着目し、この現象の定式化を目指した。我々は中枢神経損傷後の可塑的変化を表現するのに最適なニューロンモデルLIF modelを選定し、自動発火システムを構築した。いくつかのニューロンに対してポアソン分布に従った入力を与えると、自発発火を繰り返す。このシステムに対して、全体の約10%程度のニューロンを損傷させることによって、損傷部周囲のニューロンの発火活動が活性化されることを示唆するデータを得ている。今後、STDPを考慮したモデルにおいても同様の現象か見られるかを検証したい。 また、ストレスの軽減により神経細胞死を防ぐことが示唆されている。そこで我々は、前頭部α波パルス光同調法による血中カテコラミン値の変化についての検討を行った。健常者10名(男性8名、女性2名、平均年齢19歳)に対して、15分間のPFB-FAPPSを2~4回/日施工したところ、21回目の直前においてα波のリズムの賦活化とともに、血中ノルエピネフリン値(NE)が一回目の直前に対して有意な低下を示し(p<0.02)、エピネフリン値も低下の傾向を示した(p<0.10)。これにより、20回にわたるPFB-FAPPSの施行はストレスの軽減に有用である可能性が考えられた。
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