研究概要 |
大脳皮質5層錐体細胞は、その軸索の投射先によって、大きく二種類の錐体細胞に分けられる。一つは反対側の線条体に投射し同時に同側の線条体で軸索をおえるもの(CCS 細胞) である。もう一つは同側の線条体及び、橋核へ投射し、さらに脳幹へと軸索をのばすもの(CPn 細胞)である。この2種類の錐体細胞では、皮質内における形態が異なる。また、これらの2つの異なる錐体細胞グループではシナプス伝達様式、シナプス結合性が異なることが明らかとなっている。しかしながら、このように異なる情報の流れを作る興奮性神経細胞とどのように抑制性細胞が、関与するのかについては、明らかとなっていないことが多い。そこで、前頭皮質5層局所回路における興奮性―抑制性情報処理システムの解明を課題として研究を行った。まず、大脳皮質の抑制性細胞の中で、脱分極通電に対するスパイク応答の違いから分類可能であるFS細胞とLTS細胞に着目した。これらの2種の抑制性細胞は錐体細胞への入力の仕方が異なり、FS細胞は、主に細胞体など、局所的な抑制をかけ、LTS細胞は、むしろ遠位樹状突起に抑制をかけるとされている。まず、FS細胞と2種の錐体細胞のシナプス結合性は、興奮性シナプス結合確率も、抑制性シナプス結合確率もほとんど変わらなかった。次に、それぞれの錐体細胞からFS細胞へ2発の連続したスパイク入力への興奮性応答の周波数特性(10Hz, 25Hz, 40Hz)について詳しく調べた。そうしたところ、CCS細胞は、周波数が上がるにつれ、シナプス伝達減弱が強くなる傾向がみられたが、CPn細胞は、どの周波数においてもシナプス伝達増強がみられた。LTS細胞への関係についても調べたところ、2種の錐体細胞ともにシナプス伝達増強がみられた。これらのことから、特に錐体細胞から抑制性細胞への入力に関しては、投射先に依存した関係性があることが示唆された。
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