目的:腹側被蓋野ドーパミン神経の発火抑制による忌避記憶形成機序の解析 成果1『忌避反応/忌避記憶は、腹側被蓋野のドーパミン神経の発火活動の抑制のみによって生じ得る。』 腹側被蓋野のドーパミン神経は、報酬刺激に反応して発火頻度が上昇し、この反応が報酬記憶の形成に必須であることが示されている。他方、忌避刺激に反応して、腹側被蓋野の多くのドーパミン神経は発火頻度が減少することが報告されているが、これが忌避反応/忌避記憶を引き起しているかは、未だ不明であった。本研究では、オプトジェネティクスを用いて、マウスが特定の場所にいるときのみに腹側被蓋野のドーパミン神経の発火を抑制した。その結果、光刺激を受けた場所に対する忌避反応が生じ、その後、光刺激を受けなくてもその場所に対する忌避行動が観察された。この研究により、ドーパミン神経の発火抑制のみによって忌避反応/忌避記憶が生じることが示された。 成果2『忌避反応/忌避記憶は、ドーパミンD2受容体を介して形成される。』 腹側被蓋野のドーパミン神経は、主に側坐核に投射しており、側坐核は主にドーパミンD1受容体(D1R)を介して情報伝達される直接路と、ドーパミンD2受容体(D2R)を介する間接路で構成されている。本研究ではさらに、上述の光刺激による忌避反応が直接路/間接路のいずれを介して生じているかを解析するために、D1R、D2Rをそれぞれノックダウンすることにより、これらの神経回路を選択的に抑制した。D1Rノックダウン群では、コントロール群と同様に、腹側被蓋野のドーパミン神経発火抑制による忌避記憶が観察されたが、D2Rノックダウン群では、コントロール群で観測された忌避記憶が消失した。この結果から、腹側被蓋野のドーパミン神経の発火抑制によって生じる忌避反応/忌避記憶が側坐核のドーパミンD2受容体を介していることが示された。 以上をまとめて、論文に発表した。
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