研究概要 |
ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PIP3)やホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)を始めとするイノシトールリン脂質は、神経細胞において、記憶の基礎となるシナプス可塑性や樹状突起の伸長を制御することが知られている。私は、過去数年間行ってきた研究において、シナプス可塑性を単一スパインに誘導した時に、PIP3がスパイン上に生成するフィロポディア様突起物(spinule)の伸長を制御することを明らかにし、PIP3 regulates spinule formation in dendritic spines during structural long-term potentiation. (J Neurosci. 2013 Jul 3;33(27):1104-7)として報告した。また同時に、この論文で用いたPIP3蛍光寿命プローブ分子を始めとした蛍光プローブの総説をApplication of FRET probes in the analysis of neuronal plasticity. (Front Neural Circuits. 2013 Oct 10;7:163.)として報告した。さらに分化、増殖を制御する脂質分子ジアシルグリセロールの細胞内でのフリップフロップにおける挙動を明らかにした論文、Sphingomyelin regulates the transbilayer movement of diacylglycerol in the plasma membrane of Madin-Darby canine kidney cells.(FASEB J. 2013 Aug;27(8):3284-97)を報告した。現在、シナプスレベルでの記憶のモデルとなるシナプス構造可塑性にPIP3およびPIP2が及ぼす詳細な影響についての論文を作製中である。
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