研究課題/領域番号 |
24700349
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
島田 忠之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生分野, 主席研究員 (80379552)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経活動 / 軸索分枝形成 / てんかん / 神経可塑性 / 神経回路網 |
研究実績の概要 |
1,FGFによる海馬歯状回顆粒細胞の軸索分枝形成の解析 FGFは7つのサブファミリーに分類され、サブファミリーと神経の種類に応じて神経細胞は異なる応答を示す。培養ラット海馬歯状回顆粒細胞の培地に各サブファミリーを代表するFGFを添加し細胞の形態を観察した。するとFGF4サブファミリーとFGF8サブファミリーにおいて軸索分枝の形成を誘導することが明らかとなった。さらにNeuritinノックアウトマウス由来の海馬歯状回顆粒細胞の培地にFGF4とFGF8をそれぞれ加えたところ、FGF8が軸索分枝形成を誘導したが、FGF4の添加では軸索分枝の形成は起きなかった。すなわち、NeuritinとFGF4サブファミリーは協調してFGFシグナルカスケードを活性化し、軸索分枝の形成を誘導すると考えられた。 2,Neuritinによる軸索分枝形成のてんかん原性獲得への影響 GABAのアンタゴニストであるペンチレンテトラゾールを低用量、慢性的に投与することで、ペンチレンテトラゾールに対する感受性が増強し、低用量でもてんかん発作を起こすようになる(ケミカルキンドリング)。海馬顆粒細胞の軸索分枝形成は顆粒細胞の自己回路形成を誘導し、てんかん原性の獲得につながるという仮説がある。Neuritinは神経活動依存的に発現が上昇するため、発作はNeuritinの発現を促し、その結果生じる軸索分枝形成が自己回路の形成とてんかん原性の獲得につながる可能性を解析した。Neuritinノックアウトマウスにペンチレンテトラゾールを慢性投与したところ、野生型マウスと比較して、発作強度が有意に低下することが認められた。また、野生型では観察された発作後の顆粒細胞軸索の歯状回細胞層への侵入もNeuritinノックアウトマウスでは観察されなかった。すなわち、Neuritinは発作による顆粒細胞軸索分枝の形成とてんかんの悪化に密接に関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Shootin1とてんかんの関連についての解析は進まなかったが、Neuritinに関しては特定のFGFとの協調による軸索分枝形成、およびてんかん原性の獲得への関与が明らかとなった。 てんかん発作に起因する海馬歯状回顆粒細胞における軸索の分枝形成を誘導するタンパク質の機能解析と、てんかんの悪化への関連が解明された。
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今後の研究の推進方策 |
Neuritin/FGFシグナルがてんかん発作に伴う海馬顆粒細胞軸索の分枝形成とてんかんの悪化につながることが明らかとなった。そこで、このシグナルを抑えることでてんかんの悪化が防げるのかを解析できると考えられる。 具体的にはNeuritinとFGF受容体との相互作用を阻害する、あるいは神経細胞においてFGFシグナルを抑制するといった手法が考えられる。このような分子機能を持つ化合物あるいはペプチドが単離されれば、動物個体への投与方法の開発、実際にてんかんの悪化を防ぐことができるかの解析につながると考えられる。 これは新規の抗てんかん薬の開発につながると期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
スライス培養系におけるshootin1の発現を試みていたため、Neuritinの解析が若干遅れたこと、それにともない年度内を予定していたNeuritin解析結果の論文投稿が遅れたことが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、論文投稿に伴う英文校正ならびに論文受理に対する出版費用、およびrevise実験に必要とされる物品費を考えている。
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