研究課題
1 モノアミン神経系を介した手綱核による広範囲脳活動の制御機構手綱核を破壊したラットを作製し、手綱核神経活動が大脳皮質や海馬などの広範囲脳活動に与える影響を電気生理学的に調べた。手綱核破壊動物では海馬シータ波の持続時間が減弱しており、その効果はセロトニン作動性の縫線核を破壊すると消失した。この事は、手綱核がセロトニン神経系の活動を通して海馬などの広範囲脳神経活動を修飾している事を示唆している。これらの内容をまとめてJ Neurosci及びFront Hum Neurosci誌へ発表した。2 手綱核細胞の遺伝学的神経活動操作法の開発Dbx1:CreERT2; Rosa-loxP-STOP-loxP-Reporter系統へ時期特異的にタモキシフェンを投与し、手綱核細胞の遺伝学的操作方法の開発を行った。胎生13日目及び周産期(生後0~4日目)にタモキシフェンを投与したところ、それぞれ内側手綱核投射路及びS100β陽性アストロサイトへの遺伝子導入を確認できた。これらの結果は、誕生時期特異的な遺伝子操作により手綱核における異なった細胞種の活動を操作できることを示唆している。3 脳内モノアミン代謝制御における手綱核グリア細胞の役割アストロサイトはグルタミン酸輸送体を豊富に発現しており、脳局所の興奮性を決定する細胞外グルタミン酸濃度の制御を担うことが知られている。手綱核におけるアストログリアの機能を明らかにするため、グルタミン酸輸送体GLT-1阻害薬・ジヒドロカイニン酸を手綱核に局所投与した。最初期遺伝子c-Fosの発現により、手綱核アストロサイト機能障害のモノアミン神経活動に与える影響を調べたところ、黒質・腹側被蓋野のドーパミン作動性神経細胞及び縫線各群のセロトニン作動性神経細胞におけるc-Fos陽性細胞数は有意に減少していた。このことは、手綱核におけるグリア細胞障害がモノアミン神経系の機能不全を引き起こす可能性を示唆している。
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Journal of Neuroscience
巻: 33 ページ: 8909-8921
10.1523/JNEUROSCI.4369-12.2013
Frontiers in Human Neuroscience
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http://www.tmd.ac.jp/mri/aud/index.html