研究課題
マイクロアレイ解析を用いたスクリーニングによって得られた長連合ニューロンに特異的な遺伝子の候補に関して、in situ hybridizationによるスクリーニングを行った。その中で、大脳皮質の2/3層、5層、6b層に特異的な発現を示した遺伝子に関して、in situ hybridizationと逆行性神経トレーシングを組み合わせた二重染色によって長連合ニューロンにおける発現を確認した。その結果、2/3層の長連合ニューロンに発現するものが1種類、5層のものが3種類、6b層のものが2種類得られた。これらの遺伝子の遺伝子座を含むBACクローンを入手し、大腸菌内相同組換えを利用して、翻訳開始点から10-20kb程度の領域にEGFPをつないだレポーター・コンストラクトを作製した。これらを子宮内電気穿孔法により胎生11、13あるいは15日目に大脳皮質に導入し、生後14~21日目に脳組織を摘出して、長連合ニューロンの軸索及びその末端が標識できるかどうか確認した。その結果、それぞれの層の長連合ニューロンを標識できるプロモータが同定できた。現在、同定した長連合ニューロン特異的プロモータ下流にLyn-EGFPをつないだコンストラクトを子宮内電気穿孔法により大脳皮質内に導入し、以降1日毎に大脳皮質を摘出し、軸索伸長の様子を生後21日のサンプルまで共焦点蛍光顕微鏡での観察を行っており、特に、(a)白質層への進入、(b)投射先領野の選択、(c)投射先層の選択、(d)投射先でのシナプス形成、の4つのステップを中心に、成長円錐や分枝の様子などを詳細に記述する。
2: おおむね順調に進展している
In situ hybridizationとトレーシングの二重染色の技術的難度が高かったことと、プロモータのスクリーニングがin vivoの実験であることにより、多少足踏みしたところもあったが、生じた困難は克服して進めることができており、総じて順調に進行している。
長連合線維の回路構造を解析するため、長連合ニューロン特異的プロモータの制御下に小麦胚芽アグルチニン(WGA)遺伝子を発現させ、その経シナプス輸送性を利用して長連合線維の投射先領野内でシナプス後細胞を標識し、抗WGA抗体染色により可視化する。経シナプス的に輸送されるWGAは発現細胞での発現量のごく一部であると言われているので、長連合細胞特異的プロモータでCreを発現させるコンストラクトとCAGプロモータの下流にloxP-Stop-loxP-WGAを配置したコンストラクトを同時に導入することで、長連合ニューロン内でWGAの高い発現量を得るようにする。また、長連合線維の形成機構を明らかにするため、軸索ガイダンス分子に対するshRNAを用いたノックダウン実験を行う。長連合ニューロン特異的プロモータの下流にloxP-Lyn-GFP-loxP-Lyn-mCherry-shRNAをつないだコンストラクト、およびCAGプロモータ下流にタモキシフェン誘導性のCre組換え酵素(CreERT2)をつないだコンストラクトを子宮内電気穿孔法で同時に導入する。タモキシフェン投与依存的かつ長連合ニューロン特異的にshRNAが誘導される。組み換えによって軸索の標識がGFPからmCherryに替わるので、緑色の野生型対照軸索群の中で赤色標識のノックダウンされた細胞の軸索の振舞いを観察できる。大脳皮質2/3層あるいは5層に発現が報告されている遺伝子や、マイクロアレイ解析で得られた軸索ガイダンス分子・細胞骨格制御分子などを候補遺伝子として、 (a)白質層への進入、(b)投射先領野の選択、(c)投射先層の選択、(d)投射先でのシナプス形成の4つのステップを中心に軸索伸長におけるノックダウンの効果を解析する。さらに、長連合ニューロン特異的に遺伝子操作を行うためのトランスジェニックマウス系統の作製に着手する。
子宮内電気穿孔法による胎児大脳皮質への遺伝子導入実験には妊娠マウスの定期的に購入が必要であるので計上している。また、トランスジェニックマウスの作製にかかる費用も計上している。研究成果を国内・海外の学会等で発表するための旅費、実験動物管理のアルバイト謝金も計上している。
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Sci Rep
巻: 3 ページ: 1224
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Cereb Cortex.
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doi: 10.1093/cercor/bhs123