研究課題/領域番号 |
24700353
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
駒田 致和 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (90523994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヘッジホッグシグナル / 大脳皮質 / 形態形成 / 神経分化 |
研究概要 |
近年、胎児期の異常や環境が高次脳機能障害や精神疾患、生活習慣病などの成人後の疾患との関連性を示唆するDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)仮説が唱えられている。本研究課題では、大脳皮質に微小構造異常を引き起こす遺伝子改変マウスをモデルに、その異常の誘発メカニズムを解明することで、精神疾患や高次脳機能障害の発症メカニズムの一端の解明を目指している。モデルマウスとして、胎生期の終脳背側特異的に形態形成因子によるシグナルの介在因子であるSmoothened(Smo)の発現を抑制したコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析したところ、Smoは細胞周期を調節することによって神経幹細胞から前駆細胞、さらには神経細胞への分化を制御していることが明らかにした。また、これらの異常は6b層や5層の形成不全を引き起こし、神経細胞の分布や層構造形成に異常を引き起こしていた。6b層は視床下部と双方向に投射し、この領域を通るドパミン作動性神経細胞の投射にも異常を観察した。さらに、アストロサイトの分化、活性の異常が引き起こされており、またCyclinD1の発現が減少していた。このことから、Smoの発現が抑制されることによってその下流で作用するCyclinD1の発現が減少し、細胞周期の調節異常が起きている可能性が示された。つまり、このメカニズムによって適切な数の神経細胞を適切な時期に産生し、大脳皮質の層構造の適切な形成やアストロサイトの産生を制御している。このことが大脳皮質の双方向の神経投射にも影響しており、機能的な成熟にも関与していることを示唆している。つまり、終脳背側に発現しているSmoが介するシグナルは、大脳皮質の器質的な先天異常の原因となるだけでなく、高次脳機能の異常にも関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の異動が重なり、実験スペース、マウス、実験機器の確保に時間がかかっているため、計画通りに進まなかった点もあるが、現在の状況で進められるところは着実に進んでいる。特に、マウスの導入や移動、確立に時間がかかってしまっているが、以前の所属先の研究施設に協力いただきサンプルを確保するとともに、早期の導入を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初予定していた遺伝子改変マウスの導入を早急に進めるとともに、遅れている部分の実験についても実験系の確立と目指す。また、計画以上に進んている点については、今後も実験を継続して研究成果を得るとともに、新たな展開について模索する。特に、神経機能の発達・成熟と先天的な異常・奇形については非常に興味深いとともに、社会的なニーズも高いと考えられるので、特に大脳皮質の神経細胞の分布などの器質的異常が、神経投射や行動学的な異常にどのように結びつくのかを解析することで、神経系の先天性の異常と、その後の発達異常や精神疾患との関連について新たな知見を得られるように努力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた遺伝子改変マウスをJackson Laboratoryからの導入を早期に進める。また、組織学的解析を進めるために、免疫組織学的解析、in situ hybridization法・RT-PCR法を用いた遺伝子発現解析、遺伝子導入法や色素のInjectionを用いたトレーサー法による神経投射の解析、行動学的解析のセットアップを目指す。そのため、分子生物学的解析を行うための実験試薬や抗体、プラスティック製品などの消耗品を購入や、遺伝子改変マウスの飼育費、運搬費として研究費を使用する。また、最終年度であるため研究成果を広く公表するための、学会参加費、論文作成費(英文校正費、論文投稿料)として使用する計画である。
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