研究課題
ヒトの遺伝子は2 万2 千個程であるが、選択的スプライシングにより十数万種以上の蛋白質を作る。選択的スプライシング調節の破綻は発達異常・疾患病態に関与し、各種脳疾患で多くのスプライシング異常が知られている。統合失調症患者でも、ごく近年多くの関連遺伝子の選択的スプライシング異常が報告されている。我々は当疾患の多岐に渡る病態と、広範な選択的スプライシング抑制因子hnRNPA1 の機能異常に相関性があり、脳構築に異常を呈する可能性を示してきた。本研究では、hnRNPA1 の発現異常が本疾患および脳構築で関連が指摘されている遺伝子群の選択的スプライシングを撹乱し、結果的に多くの関連遺伝子の発現を変化させること、またオリゴデンドロサイトの分化成熟異常を来すことを示した。これら結果は、まだブラックボックスな部分が多いことは確かであるにせよ、hnRNP A1 発現の攪乱が結果的に統合失調症様の遺伝子発現の攪乱を引き起こしていることを示している。ここまで挙げてきた、グローバルな選択的スプライシング抑制因子の一つhnRNP A1 が、選択的スプライシングの調節を介して、神経系(神経細胞とグリアの両方)細胞分化・成熟において重要な役割を果たしているという多くの予備結果は、これまで全く新規の知見である。更に本研究課題の結果により、近年注目されてきた「RNA 病(狭義にスプライシング病)」なる概念をより広く提唱・創造できるかもしれない。
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