研究課題/領域番号 |
24700360
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐貫 理佳子 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (50607471)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 網膜 / 海馬 / 遺伝子発現調節 / アデノ随伴ウィルス |
研究概要 |
マイクロRNAはゲノムDNAにコードされ、転写とその後のプロセッシングによって誕生する18~25塩基程度の短いRNAである。作用機序はsiRNA (small interfering RNA)と似ており、マイクロRNAは他の蛋白質と共に複合体RISC (RNA-induced silencing complex)を形成して、マイクロRNAと相補な配列を持つmRNAを標的として結合し、そのmRNAの翻訳阻害あるいは分解を行う。すなわちマイクロRNAは標的遺伝子の発現を調節し、ある細胞環境中で協調した遺伝子の発現制御を行うために必須の役割を持つ。神経マイクロRNAの機能を生体で調べるために、中枢神経系のモデルとして網膜と海馬を用いて解析を進めている。 マイクロRNAの標的候補遺伝子を網膜に過剰発現させて、マイクロRNA欠損マウスと同じ表現型が得られるかin vivoで評価を行う。現在までにin vivoで網膜に遺伝子を発現させる方法はエレクトロポレーション法が良く知られているが、この方法ではヒトの視覚獲得にとって重要な網膜錐体視細胞には遺伝子を導入できない。そこでアデノ随伴ウィルス(AAV)を用いたin vivo遺伝子導入法を開発した(Watanabe, Sanuki et al., 2012)。網膜錐体視細胞には5型のAAVが最も高効率に遺伝子を導入できることが明らかとなった。また、その他の神経細胞腫についてもそれぞれに適した血清型のAAVが存在した。 神経マイクロRNAの発現を成体脳で欠損させるために、コンディショナル欠損マウスを作製している。現在までにES細胞から生殖系列にのったマウスの作製が完了した。マイクロRNAトリプル完全欠損マウスは掛け合わせを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は網膜への遺伝子導入に最適なAAVの血清型を明らかにした。本研究成果は論文として発表することができた。本研究成果は今後さらに同定されるマイクロRNAの標的遺伝子の過剰発現における表現型やノックダウンによるレスキューを行うために重要な準備段階である。また代表者が所属する研究室が移動となり、多大な労力を必要とした。それでも比較的順調に研究の再開ができたため、おおむね順調に研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
PAR-CliPはUV(365 nm)の照射によって、RNAとRNA結合蛋白質(本件の場合はRISC中の蛋白質)を架橋するし、RISC複合体を形成する蛋白質に対して免疫沈降を行ってからRNAを精製する方法である。作製した動物に本方法に基づく実験を行う。得られたRNAの品質チェックは24年度に同定した標的遺伝子候補の含有の有無によって評価する。また、作製した動物は電気生理学的方法を用いて解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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