昨年度の研究により、αシヌクレイントランスジェニックマウス(A53変異;A53T-SNCA-TG)とp62ノックアウトマウス(p62-KO)を交配し、作製した4系統のマウス(Wild;SNCA-/p62+、p62KO;SNCA-/p62-、Tg;SNCA+/p62+、Tg/KO;SNCA+/p62-)では、p62の有無に関わらず、A53T変異遺伝子を導入したマウス(Tg、Tg/KO)で脳内にリン酸化αシヌクレイン陽性封入体の形成が認められた。今年度、これら2系統のマウスを用い封入体数の定量比較を行ったところ、Tg/KOマウスにおいて、有意に封入対数の増加が認められた。p62はレビー小体や神経原線維変化を含む細胞内封入体の構成成分であり、封入体形成の早期から参画していることが知られている。しかしp62を欠くTg/KOマウスにおいても封入体が形成されることから、p62の他に封入体形成に関与していると思われるNBR1(p62と相互作用するユビキチン化蛋白レセプター・アダプター)ならびにKeap1(p62と相互作用するユビキチンリガーゼ複合体)の発現量を調べるため、westarn blot解析を行った。その結果、KOおよびTg/KOマウスにおいてこれら2つの分子の発現量が増加しており、特にTg/KOマウスにおいて、p62と機能的・構造的に類似したNBR1がTgマウスと比較して有意に増加していたことから、NBR1はp62の欠損を補うため上方制御され得ることが示唆された。
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