研究課題/領域番号 |
24700364
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
島村 真太郎 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30547138)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 癌の浸潤 |
研究概要 |
脳腫瘍の悪性化には細胞の浸潤が深く関わっている。浸潤に関連するSrc キナーゼの下流の因子で、癌細胞で特異的に機能するものを標的とすることを考え、既にSKAP2 という、従来癌への関与がほとんど知られていなかった因子を同定した。SKAP2 は当初、脳腫瘍でSrc 基質として単離されたが、意外なことにその後の解析で癌の浸潤に負に働くことが示された。SKAP2が真の腫瘍抑制因子であるか調べることと、SKAP2 を基盤に相互作用因子を探索することで、新たな分子機構を解明し、副作用の少ない標的分子を発見することが、本研究の目的である。既に、ヒトグリオブラストーマU87MG をヌードマウスの脳室に移植し、飼育後に悪性化した腫瘍組織を採取し、また別のヌードマウスに移植することを4 回繰り返した、高浸潤型の腫瘍組織U87F4 を得ている。この細胞と繊維芽細胞を用いた解析で、SKAP2と相互作用する因子としてWAVE2とcortactinを同定した。これらの相互作用によりSKAP2が細胞移動に関するアクチン重合を制御することを証明した。このようなアクチン重合の制御により、SKAP2が細胞移動や癌の浸潤を制御することを、ノックダウンと過剰発現の両方の系で、細胞レベルと個体レベルで証明した。さらに、以上の全ての結果に対して、SKAP2のリン酸化の影響を検証した。以上の結果をまとえめて、その論文をTHE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (JBC) 2013年1月号に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SKAP2の相互作用因子としてWAVE2、cortactinを挙げて、その結合の意義を示し、細胞移動や癌の悪性化に負の影響を与えるという結果を示したことで、これは本研究の目的に沿っている。さらに、SKAP2に関する、細胞移動、癌の浸潤、アクチン重合、蛋白質相互作用、リン酸化の解析を一通り行って、論文にまとめたことが本研究の存在価値を証明している。より臨床へ向けた応用解析があまり進まなかったので、今後の課題となる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度にSKAP2の基礎的な解析は一定の成果を上げ、かたちにしたので、今後は臨床への応用をより進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額については、昨年度の全体額からしたら少ない額であり、誤差として生じたものである。この額は具体的に研究計画を変更させるような要因にはならず、今年度以降の額に加算して調整していく予定である。
|