研究課題/領域番号 |
24700373
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
若林 朋子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20530330)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 分子・細胞・神経生物学 / アルツハイマー病 |
研究概要 |
アルツハイマー病脳老人斑より同定したCLAC-P/collagen XXVについて、ノックアウトマウスの表現型解析により運動ニューロンと骨格筋の発生に重要な役割を果たすことが明らかとなった。本研究課題では発生過程における生理機能のより詳細な解明をめざし、コンディショナルノックアウトマウスの作製を試みている。今年度は、Col25a1 floxマウス作出のため、ES細胞の相同組換えとFlp-FRPシステムによる選択カセット除去、キメラマウスの作製を行い、最終的にCol25a1 floxマウスを得ることに成功した。現在、運動ニューロン、骨格筋、神経細胞特異的にCol25a1遺伝子をKOするためのCreリコンビナーゼトランスジェニックマウスとの交配を進めており、来年度には表現型の解析結果が得られる予定である。 またCol25a1 KOマウスの表現型について、運動ニューロンンのアポトーシスと標的骨格筋内での軸索伸長の障害が発生の同時期(胎生13.5日前後)に起こるため、これまでその因果関係が明らかでなかった。そこで運動ニューロンのプログラム細胞死を抑制することが知られるBax KOマウスとCol25a1 KOマウスを交配し、解析を行った。その結果、Bax KOによりCol25a1 KOの運動ニューロンの細胞死はほぼ完全に抑制されたが、運動ニューロンの軸索末端は骨格筋侵入部位付近にとどまり、胎齢を追っても軸索伸長が抑制されたままであった。これらの結果から、CLAC-Pの欠損では軸索伸長障害が主要因となり、標的由来の栄養因子を十分に受容できない影響で、運動ニューロンが過剰なアポトーシスを起こしていることが明らかとなった。 In vitroの実験系については、運動ニューロン特異的GFPトランスジェニックマウスの胎児脊髄から前角のexplant培養を行い、軸索伸長を評価する実験系を樹立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は大きく①Col25a1 cKOマウスの作出、②Bax KOを用いたCol25a1 KOマウスの解析、③in vitroでの軸索伸長の評価、④アルツハイマー病におけるCLAC-Pの機能の評価である。このうち、①についてはCol25a1 floxマウスの作出が終了し、現在Cre tgマウスとの交配が進んでいる段階である。またこれに伴い、④の実験についてもアルツハイマーモデルマウスとの交配準備が進んでいる。②については、研究計画にあった交配を行い、全ての解析が終了した。③については、脊髄運動ニューロンを含む前角の組織培養実験系を確立し、各種条件での実験を進める段階に至っている。以上の理由から、交付申請時の研究計画はおおむね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究のおおむね順調な進捗を受け、来年度の研究については、交付申請時に予定していた内容どおりに進めて行く。 具体的には、cKOマウスの作出と解析が中心となり、運動ニューロン、骨格筋、全神経細胞での特異的ノックアウトマウスを用い、各種組織におけるCol25a1遺伝子の欠損が神経筋発生ならびにその他の中枢神経系の発生等に与える影響とそのメカニズムについて、詳細な解析を進めて行く。また、Col25a1 cKOマウスを用いた解析の発展として、アルツハイマー病との関与についても焦点を当て、アルツハイマー病モデルマウスを併用した解析も進める予定である。更に、生理機能に関する分子レベルでの解析のため、今年度樹立したin vitroの運動ニューロンを含む組織培養の実験系に加え、培養細胞系も導入し、CLAC-Pとの結合が示唆され、神経軸索における機能との関連でも寄与が考えられているプロテオグリカンや受容体型チロシンフォスファターゼRPTPsとの相互作用に着目した研究を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスを用いた研究について、動物飼育に関わる飼育消耗品および組織化学的解析にかかる免疫化学試薬の購入、in vitroの組織培養、培養細胞を用いた研究について、細胞培養用試薬および分子生物学実験用試薬の購入を予定している。
|