研究概要 |
アルツハイマー病脳老人斑より同定したCLAC-P/collagen XXVについて、ノックアウトマウスの表現型解析により運動ニューロンと骨格筋の発生に重要な役割を果たすことが明らかとなった。本研究課題では生理機能のより詳細な解明をめざし、コンディショナルKOマウスの作製と解析を行っている。今年度は、運動ニューロンと骨格筋それぞれでCLAC-Pを特異的に欠損するマウスを作製し、胎生期における神経筋発生の詳細な解析を行った。その結果、運動ニューロン特異的KOマウスは正常に発生したが、骨格筋特異的KOマウスは通常のKOマウスと同様、運動ニューロンが骨格筋内での軸索伸長の障害を来たし、アポトーシスにより消失した。このことから、筋肉由来のCLAC-Pが発生期の神経軸索の伸長・分枝に重要な役割を果たしていることが示された。初代培養運動ニューロンに対するリコンビナントCLAC-Pの添加では、運動ニューロンの生存率や軸索伸長に顕著な変化は認められず、CLAC-Pが神経栄養因子として機能している可能性を否定する結果となった。本研究により、標的骨格筋内での運動ニューロン軸索伸長を担う分子メカニズムの一端が明らかとなり、論文報告を行った(Tanaka et al., J Neurosci, 2014)。 中枢神経系におけるCLAC-Pの機能解析の目的でNestin-CreあるいはCamKII-Cre Tgマウスとの交配により神経細胞特異的にCLAC-Pを欠損したマウスも作出し、成体マウスを得ており、解析を進めている。また、シナプスオーガナイザーであるtype IIa RPTPとの関連として、CLAC-PのRPTPσ、δへの結合がin vitroの結合アッセイで示され、シナプスあるいは神経突起の伸長過程でCLAC-PとRPTPが協調的に働いている可能性を示した。
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