研究課題/領域番号 |
24700374
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田村 拓也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80396647)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流イギリス |
研究概要 |
脊髄小脳失調症1型はポリグルタミン病と呼ばれる神経変性疾患の一種である。我々は以前に、同じくポリグルタミン病の一種であるハンチントン病における、神経細胞核におけるDNA損傷の亢進を見出している。本年度においては、脊髄小脳失調症1型のモデルマウス(Ataxin1-KIマウス)、モデルショウジョウバエにおいても、神経核のDNA損傷が亢進しているかを解析した。Ataxin1-KIマウスにおいては、小脳プルキンエ細胞及びバーグマングリアにおいて、DNA二重鎖切断のマーカーである、53BP1及びgammaH2AXシグナルが亢進していた。また、ショウジョウバエモデルにおいても、変異型Ataxin1を発現する神経細胞でgammaH2AXのホモログ、gammaH2Avが亢進していることを確認した。ショウジョウバエを用いたin vivoスクリーニングの結果、DNA損傷修復に関与する「遺伝子X」がモデルショウジョウバエの行動学的表現型のみならず、DNA損傷の亢進をも回復することが明らかとなった。生化学的実験及び免疫組織化学実験により、「遺伝子X」はAtaxin1と結合する分子であることが示唆された。また、「遺伝子X」とAtaxin1の結合は変異型Ataxin1でより顕著であった。さらに、微小領域放射線照射実験により変異型Ataxin1を発現する細胞では、「遺伝子X」のDNA損傷応答が阻害されていることが示された。これらの結果を総合的に考えるとAtaxin1がDNA損傷修復においてなんらかの役割を果たしていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における達成目標はショウジョウバエモデルを用いたDNA損傷修復の解析と、培養細胞を用いた野生型及び変異型Ataxin1のDNA損傷修復への関与の解明であった。 脊髄小脳失調症1型モデルショウジョウバエにおけるDNA損傷の亢進をgammaH2Av染色により確認することが出来た。また、このモデルショウジョウバエの行動学的表現型を回復できるDNA損傷修復遺伝子「遺伝子X」が、実際にDNA損傷も改善できていた。遺伝子XはDNA損傷に応答して核内での局在を変えるが、変異型Ataxin1がこの局在変化を阻害することを明らかにしている。 生化学的・免疫組織学的実験もAtaxin1と「遺伝子X」のインタラクションをサポートしており、本年度の目的を達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニングの結果、脊髄小脳失調症1型モデルショウジョウバエの行動学的表現型を回復する遺伝子を複数明らかにしている。今後は、ネットワーク解析を行い真に重要であろう、ネットワークの”コア”となる遺伝子を明らかにしたい。また、変異型Ataxin1がどのステージの細胞に対して強い毒性を示すか明らかにするため、時期特異的発現実験を行う。 ネットワーク解析の結果明らかとなった、コア分子に対する阻害剤がモデルショウジョウバエの表現型(行動学及びDNA損傷の亢進)を回復できることを示し、分子メカニズムの解明と治療という両側面からの成果を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
ショウジョウバエ飼育費、人件費、阻害剤等の購入に当てる。
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