研究課題
前年度までの研究において,マウス強制水泳試験を用いた検討により,デルタメトリンが投与後投与後12時間において抗うつ様作用を有していることを明らかにした。また,脳海馬におけるBDNF mRNAの発現をリアルタイムRT-PCR法により解析したところ,投与後12時間後において有意に増大した。またin situ hybridizationによる検討からも,BDNF mRNAが海馬歯状回,CA1,CA3の領域において強く発現上昇していることも確認できた。以上のことから,デルタメトリンが抗うつ様作用を有し,その効果には海馬におけるBDNF遺伝子発現上昇が関与していることが示唆された。本年度は,デルタメトリンの投与により脳で発現が増大したBDNFが抗うつ様作用に直接関与しているかどうかを検討する目的で,trkチロシンキナーゼ阻害薬であるK252aの効果を検討した。K252a(1 nmol/mouse)および溶媒(0.1% DMSO)は,強制水泳試験の30分前に,側脳室内に投与した。溶媒投与群においては,デルタメトリンの投与12時間後において,有意な無動時間の短縮,すなわち抗うつ様作用が見られたが,K252a投与群では無動時間の短縮が見られなかった。以上の結果は,デルタメトリンの投与により産生されたBDNFが,脳(おそらく海馬)のtrkB受容体を介して抗うつ様効果を発揮していることを示唆するものである。本研究の成果は,Behav Brain Res. 257:182-8 (2013)に報告した。
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Behav Brain Res.
巻: 257 ページ: 182-188
10.1016/j.bbr.2013.09.044.