ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、視床下部に存在するGnRHニューロンによって産生・分泌される。GnRHの産生・分泌の調節は、正常な性成熟にとって非常に重要な役割を担っており、GnRHニューロンの機能を統合的に理解することは重要である。 本研究ではGnRHニューロンの細胞培養株であるGT1-7細胞を用いて、GnRH受容体刺激による細胞内のシグナル伝達機構について研究を行い、GnRH受容体の刺激によってERKの活性化およびErbB4が切断されることを明らかにした。それら機構を詳細に解析した結果、 (1)Cキナーゼのダウンレギュレーション実験では、ErbB4の切断が抑制されたことから、ErbB4の切断にCキナーゼが関与することが分かった。また、GnRH刺激によるERKの活性化では、PKCδがPKDを活性化することが明らかとなった。これらCキナーゼはGnRH刺激によって膜に局在し、活性化されることが示唆された。(2)GnRHおよびPMAの刺激によって、速やかにPKDがダウンレギュレーションされることを見出した。(3)免疫沈降実験によって、PYK2と相互作用するSrcファミリーのアイソフォームがFynであることを示す結果が得られた。(4)昨年度、DNAマイクロアレイによる網羅的な発現解析によって、GnRH刺激後に発現の変動する遺伝子群を同定した。今年度は、それら遺伝子の発現をRT-PCR法およびウエスタンブロッティングにて確認した。MAPキナーゼの脱リン酸化酵素(DUSPs)のうち、少なくとも2種類のアイソフォームの発現がGnRH刺激後30~60分で増加していることが分かった。 これら研究によって、GT1-7細胞ではGnRH受容体の刺激によってERKが活性化され、その後ERKの脱リン酸化酵素の発現が上昇することが示唆された。
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