研究課題
児童虐待は子どもの心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与え、子どもの生命が奪われるなど重大な社会問題になっている。児童虐待が起こる背景や原因には、子育てに対する不安・ストレス、経済的不安などさまざまな問題が複合的に絡み合っている。また親自身が虐待された経験を持つことも大きな要因である。実際、虐待などの不適切な養育が認められる母親は、子ども時代に自分自身も実親からの不適切な養育を経験していることが数多く報告されている。本研究では、幼児期の低養育環境が連鎖するメカニズムを分子レベルから明らかにすることを目的としている。これまで、幼児期の社会的隔離による低養育環境が、脳内大脳皮質神経細胞スパイン内でのCoffilin不活性化を介したアクチン流動性を引き起こすことを発見した。さらに、社会的隔離によるCoffilinの不活性化が、AMPA受容体のシナプスへの移行を障害することを明らかにしてきた。当該年度は、社会的隔離など幼児期に低養育環境下で飼育された雌ラットにおいて、成熟後の養育行動観察を行った。幼児期に負荷するストレスパターンを様々に変えることにより、幼児期の養育環境と成熟期の養育行動の相関性を解析した。また低養育環境経験ラットに飼育された仔ラットの大脳皮質において、AMPA受容体シナプス移行について、電気生理学的解析を行い、親ラットの低養育行動とAMPA受容体シナプス移行の相関関係についても解析を行った。今後、様々な養育行動関連脳領域への影響を含め、世代を超えた低養育行動の連鎖性を分子・神経ネットワークレベルから解明していく予定である。
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