研究課題/領域番号 |
24700383
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
鄒 鶤 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (40450837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイド沈着 / Aβ43変換活性 / アンギオテンシン変換酵素 |
研究概要 |
アルツハイマー病(AD)では、アミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積機構の解明が重要な課題となっている。我々は、血圧調節に重要なアンギオテンシン変換酵素(ACE)が、毒性の強いAβ42を神経保護作用をもつAβ40に変換する活性を有することを明らかにしてきた。近年、Aβ42に加え、Aβ43の毒性もAD発症の要因になっていることが示されてきている。本研究では、ADの予防・治療の介入点としてAβ43変換活性の促進を考え、Aβ43変換酵素同定し、Aβ蓄積におけるAβ43変換酵素の役割を明らかにする。 我々は、ADモデルマウス(APPtgマウス)脳内のAβ43の沈着を調べたところ、Aβ43の沈着は、Aβ42とAβ40よりも早く出現し、神経細胞にAβ43単独の蓄積が観察された。このことは、加齢によるAβ43の早期蓄積がAD発症の一因になっていることを示唆している。さらに、我々は、マウス脳内にAβ43をAβ40に変換する活性(Aβ43変換活性)が存在することを見出した。脳内のAβ43変換活性にACEが関与している場合は、二つのルートが考えられる。一つは、ACEによるAβ43からAβ41へ変換後、別のcarboxypeptidaseがAβ41をAβ40へ変換する。もう一つのルートは、carboxypeptidase がAβ43をAβ42へ変換し、その後、ACEがAβ42をAβ40へ変換するという二段階の変換が考えられる。我々は、ACEがAβ43をAβ41へ変換することを明らかにした。ACE阻害剤をAPPtgマウスに長期投与したところ、脳内Aβ43の沈着が顕著に増加した。さらに、我々は、Aβ43をAβ42へ変換する酵素をACE2であることを同定し、ACEおよびACE2により、Aβ43がAβ40へ変換されること明らかにした。脳内ACEおよびACE2の活性の維持がADの予防に重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、我々は、APPtgマウス脳内にAβ43が沈着するか否か、Aβ42とAβ40の沈着との違いがあるか否か、また、Aβ43をAβ40へ変換する酵素の同定に着手し研究を行った。その結果、Aβ43は、家族性ADの原因遺伝子、プレセニリンの変異がなくても、Aβ42とAβ40よりも早期に脳内に沈着することを明らかにした。ADの発症および脳内Aβの蓄積にはAβ43が深く関与していることが示唆された。また、我々は、ACEがAβ43をAβ41へ変換すること、ACE阻害が脳内Aβ43の沈着を増加させることも明らかにした。さらに、Aβ43をAβ42へ変換する酵素をACE2であることを同定し、ACEおよびACE2により、Aβ43がAβ40へ変換されることを明らかにした。以上の結果により、本年度の本研究の達成度は、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画では、ACE2の活性が加齢により発現や活性の変動があるか否かを検討する。3カ月から21カ月齢マウス脳を用いて、Westernblot法やリアルタイムPCR法で解析する。また、健常者と比べ、AD患者の血中ACE2活性が変化しているか否かを明らかにする予定である。さらに、ACEおよびACE2の組み換えタンパクを作成し、APPtgマウスに腹腔内投与を行う。腹腔内へ投与した組み換え蛋白は血液に吸収されることを確認されているため、ACE2が血漿Aβ43を下げるか否か、また、脳内のAβ43沈着を抑制するか否かを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、本年度とほぼ同額であり、大部分はマウスの購入、飼育費用ならびに試薬、抗体およびAβのELISAキットに使用する予定である。また、論文掲載費用、英文校閲費用、国内、国際会議にて研究成果の発表にも使用する予定である。
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