研究概要 |
アルツハイマー病(AD)では、アミロイドβ蛋白(Aβ)蓄積機構の解明が重要な課題となっている。我々は、血圧調節に重要なアンギオテンシン変換酵素(ACE)が、毒性の強いAβ42を神経保護作用をもつAβ40に変換する活性を有することを明らかにしてきた。近年、Aβ42に加え、Aβ43の毒性もAD発症の要因になっていることが示されてきている。本研究では、ADの予防・治療の介入点としてAβ43変換活性の促進を考え、Aβ43変換酵素同定し、Aβ蓄積におけるAβ43変換酵素の役割を明らかにする。 我々は、ADモデルマウス(APPtgマウス)脳内のAβ43の沈着を調べたところ、Aβ43の沈着は、Aβ42とAβ40よりも早く出現し、神経細胞にAβ43単独の蓄積が観察された。このことは、加齢によるAβ43の早期蓄積がAD発症の一因になっていることを示唆している(Zou et al., Am J Pathol, 182:2322-31, 2013)。さらに、我々は、マウス脳内にAβ43をAβ40に変換する活性(Aβ43変換活性)が存在することを見出した。脳内のAβ43変換活性にACEが関与している場合は、二つのルートが考えられる。一つは、ACEによるAβ43からAβ41へ変換後、別のcarboxypeptidaseがAβ41をAβ40へ変換する。もう一つのルートは、carboxypeptidase がAβ43をAβ42へ変換し、その後、ACEがAβ42をAβ40へ変換するという二段階の変換が考えられる。我々は、ACEがAβ43をAβ41へ変換することを明らかにした。ACE阻害剤をAPPtgマウスに長期投与したところ、脳内Aβ43の沈着が顕著に増加した。さらに、我々は、Aβ43をAβ42へ変換する酵素をACE2であることを同定し、ACEおよびACE2により、Aβ43がAβ40へ変換されること明らかにした(Liu et al., J Neurosci Res, in press)。脳内ACEおよびACE2の活性の維持がADの予防に重要と考えられる。
|