研究概要 |
シナプスの機能はタンパク質のリン酸によって様々に制御されているが、その制御が脳の機能にどのように関わっているかについては未だ明らかではない。SNAP-25は開口放出による神経伝達物質放出や、細胞膜へのイオンチャネルの組み込みなどに不可欠なタンパク質で、PKC依存的にリン酸化される。申請者は脳でのSNAP-25のリン酸化が、ストレスや向精神薬の投与で上昇することや、SNAP-25のリン酸化部位に変異を加えた変異マウスではストレスへの適応障害や不安様行動が出現することを見出しており、脳でのSNAP-25のリン酸化の制御機構や役割を明らかにすることを本研究の目的とした。本研究期間に3項目の進展が得られた。 (1):まず、マウス脳内のSNAP-25のリン酸化がストレスにより急上昇し、ストレス除去により急低下することを、昨年度に学会で発表し(北米神経科学会, 2012)、今年度に論文として報告した (Neuroscience letters, 2014)。 (2):さらに、SNAP-25の脱リン酸化にはPP2Aがホスファターゼの1つとして関与することを明らかにし、昨年度に論文として発表した (Neurosci Res., 2013)。 (3):そして、リン酸化部位を変異させSNAP-25のリン酸化が生じないノックインマウスおよび野生型マウスの脳から調製したシナプトゾームを用いて、SNAP-25のリン酸化がドーパミンの放出を促進的に制御することを明らかにし、本年度に学会発表を行い(北米神経科学会, 2013)、現在は投稿準備中である。
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