研究課題
1.モノアミン制御におけるIRBITの寄与について検討を行った。モノアミン産生の鍵となるTyrosine hydroxylase (TH)の活性はリン酸化により制御されており、その一つにCaMKIIαによるリン酸化がある。そこで、IRBITによるCaMKIIα活性制御がTHのリン酸化に及ぼす効果を細胞株実験系で検討した。CaMKIIαを安定発現させたHEK-293細胞ならびに、内在性のTH、CaMKIIを発現するPC-12細胞を用い、基質としてTHを発現させ、Ca2+ ionophoreにより刺激したところIRBIT過剰発現によりTHリン酸化が著しく抑制される事がわかった。また、PC-12細胞にIRBITを過剰発現したところ、内在性のTHリン酸化並びに50mM KCl刺激によるTHのリン酸化亢進がIRBIT過剰発現により抑制される事がわかった。これらの結果はIRBITがCaMKIIαの活性制御を介してTHのリン酸化を調節している事を示唆する。次に、IRBIT KOマウスの黒質線条体におけるTHのリン酸化状態を二重免疫染色により検討した。その結果、IRBIT KOマウスの黒質線条体においてTHのリン酸化が亢進している事が分かった。この結果はIRBIT欠失によるTHリン酸化の亢進が過剰なモノアミン産生を誘導し、多動異常等の行動異常の原因になっている事が考えられる。今後はモノアミン系の抑制薬が行動異常に及ぼす効果を検討していく。2.IRBITによる細胞内外のpH制御の検討を行うためのpH imagingの実験系を立ち上げた。現在までに培養細胞株並びに培養神経細胞およびグリア細胞で刺激依存的なpH変化を観察する事に成功しており、今後、IRBIT KOマウス由来の神経およびグリア細胞を用いてIRBIT欠損がpH制御に及ぼす効果を検討していく。
2: おおむね順調に進展している
モノアミン制御におけるIRBITの寄与についてその分子基盤の一端を明らかにする事ができた、またpH imagingの実験系確立に成功しており、今後の成果が期待される。さらに、LongIRBITに関してはマウスにおける新規スプライシングバリアントを発見しており、新規スプライシングバリアントの機能解析から新たな知見が多く得られると考えられる。
今後の課題の一つであるIRBITKOマウスの電気生理学的解析およびpH imagingを効率的に進めるため、その律速となるマウスの個体数確保のため、マウス飼育スペースの拡充を行った。また、本年度に新規に発見したLongIRBITスプライシングバリアントの機能解析を進めるためスプライシングバリアント特異的な抗体の作成を現在進めている。また、グリア細胞特異的なノックアウトマウス作成のためtamoxifenにより誘導可能なCreをGFAPプロモーター下で発現するマウスの導入を検討している。
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Gastroenterology
巻: 13 ページ: 00461-7