研究課題
家族性ALSの最も主要な原因タンパク質である変異SOD1は、ER-ミトコンドリア膜間領域(MAM)に特異的に蓄積する。MAMは、カルシウムイオンの流入やエネルギー生産といった神経細胞にとっては極めて重要な領域であるとされており、変異SOD1がMAMに蓄積することで何らかの機能障害が起こり、神経細胞死が誘導されていると予想された。しかし、現在までに報告されている情報を整理しても、MAMに異常が起こった時に、特異的に誘導される細胞内現象を検討することは極めて困難であった。そこで、本研究では、MAMを主要な局在場所とするSigma-1 receptor (SigR1)に着目することにした。SigR1は、SOD1と同様にALSの原因遺伝子とされており、SigR1のALS変異を用いた解析を行なうことでMAMに障害が起こったモデルとなるであろうと考え、解析を進めた。また、SigR1には特異的なアンタゴニストやアゴニストが存在し、薬剤処理により機能を阻害または促進させることが出来る。これらの薬剤を利用し、SigR1の機能を阻害または促進した時の細胞内現象を調べる解析も併せて行なった。一連の解析により、(1)SigR1が電位依存性カリウムチャネルの一種であるKv2.1と直接相互作用していること(2)薬剤処理によりSigR1の機能阻害を起こすとKv2.1の局在に異常をきたすことを新たに見出した。これらの知見は、Kv2.1がALS病態に関わっていることを示唆しており、今後の解析に繋がると考えている。また、今後の課題として、変異SOD1のMAMへの蓄積と、Kv2.1の局在異常およびチャネル活性との相関を精査する必要があると考えている。
すべて 2014
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Journal of Biological chemistry
巻: vol.289(15) ページ: 10566-10581
巻: vol.289(2) ページ: 1192-1202