抗体提示型ウイルスベクターによる平行線維終末と登上線維終末特異的感染法の確立を目指して研究を実施した。26年度においては、抗体提示型ウイルスベクターに、初年度に作成したVGluT1 とVGluT2の抗体をそれぞれ結合させ、マウス小脳の神経細胞に対する特異的な感染を試みた。しかしながら、いずれの場合も、期待したような特異的な感染は得られなかった。一方で、結合した抗体ごとに感染細胞種には若干の違いがあったために、抗体依存的な感染は一部で起こっていると思われる。例えば、下オリーブ核ニューロンへの感染が期待されるVGluT2を結合させたウイルスの場合、期待に反して、プルキンエ細胞への感染が増大していた。これらのことから、初年度に作成した抗体の特異性が不十分であることが、このような結果をもたらしたものと考えられる。今後は、結合させる抗体の特異性を高めることや、異なる膜タンパク質をターゲットとした抗体を結合させたウイルスを検討する必要がある。 このように結果として、本手法の確立には至らなかったが、26年度中にマウス小脳への遺伝子導入や遺伝子治療を志向した関連する研究において、共著の2報の学術論文を出版することができた。
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