研究概要 |
本年度は,後肢刺激による感覚応答興奮波の発生やその伝播に対して,自発興奮波や,異なる体部位の刺激による感覚応答興奮波の影響を解析した。感覚応答興奮波同士の相互作用では,後肢刺激に対して,前肢刺激を先行させ,先行する時間を0, 20, 50, 100, 200, 300 msecと変化させることで,前肢応答興奮波が後肢応答興奮波に与える影響とその時間経過を解析した。その結果,刺激間隔が0, 20msecの時は,前肢興奮波が後肢領域に到達するより前に後肢興奮波が発生した。両興奮波は衝突し,衝突後,両興奮波は消失した。50, 100msecでは前肢興奮波が後肢領域に到達したタイミングで後肢興奮波が発生し,前肢興奮波に何らかの影響が生じると予想されたが,前肢興奮波には一切変化が観測されなかった。200, 300 msecでは後肢興奮波は前肢興奮波が後肢領域を通過後,発生すると予想され,確かに,後肢興奮波の発生はみられた。しかし,その伝播範囲は単独刺激時に比較すると狭くなっていた。次いで,自発興奮波の感覚応答興奮波に対する影響を解析した。感覚応答興奮波は刺激に先行する自発興奮波によってその発生や伝播領域が大きく抑制させることが明らかになった。さらに,その抑制効果の持続時間を詳細に解析したところ,自発興奮終了の50msec後までに刺激を与えられたとき,その刺激応答興奮波の伝播に影響がみられることが明らかになった。このように,感覚応答興奮波同士の相互作用と同様の影響がみられたが,前肢興奮波の影響は興奮波が消失してから100msec後も持続しており,自発興奮波の抑制効果は感覚応答興奮波よりも短時間に消失することが明らかになった。
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