①新型三次元多光子レーザー顕微鏡を用いたカルシウム測定法を確立した。本顕微鏡を用いて、マウス一次体性感覚野皮質(後肢)からカルシウムイメージングを行った。ピエゾ素子を用いて対物レンズを20Hzで上下に数百マイクロメートル振動させ、樹状突起の複数の場所からカルシウムイメージングを行った。 ②単一神経細胞樹状突起からのカルシウムイメージング法を確立した。生きているマウスから、ホールセル記録法を行い単一神経細胞にカルシウム色素を充填し、樹状突起のカルシウム変化と細胞体の膜電位変化を同時測定した。また、カルシウムプローブを遺伝的に発現している遺伝子改変マウス(GCaMPマウス)を用いて樹状突起のカルシウム変化の測定法も確立した。 ③これらの方法とさらに複数の手法を用いて、トップダウン入力によって制御される神経回路をマウスの体性感覚系において同定した。具体的には、1.マウス一次体性感覚野と二次運動野との間に相互的な投射が存在することを確認した。2.二次運動野からのトップダウン入力が、樹状突起スパイクを誘起し、それにより5層神経細胞の選択的な発火を引き起こすことを示した。3.後肢の触覚を手がかりとする行動実験において、二次運動野からのトップダウン入力を光遺伝学的手法を用いて抑制すると、マウスの知覚が不正確になると解釈できる結果を得た。 当初の目的であった「カルシウムウエーブが生きた動物でも生じるかを検証する」を達成することはできなかったが、本研究によって樹状突起のカルシウム応答が知覚形成の基本的な構成要素となっていることを明らかにした。
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