研究課題/領域番号 |
24700406
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
江口 工学 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 研究員 (80470300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シナプス / エンドサイトーシス / PKG / パッチクランプ法 / 膜容量測定法 |
研究概要 |
本年度の実験では、電気生理学的手法を用い、聴覚系巨大シナプスCalyx of HeldにおけるPKG依存性小胞エンドサイトーシスの生後発達変化を調べた。聴覚獲得前(生後7~8日)のラットのcalyx of Heldシナプス前末端にホールセルパッチクランプを適用し、膜容量測定法により小胞エンドサイトーシスの速度を観察した。PKG阻害剤をパッチ電極からシナプス前末端内へと注入したが、小胞エンドサイトーシスの速度は変わらなかった。聴覚獲得後(生後13~14日)のシナプス前末端ではPKG阻害剤によって小胞エンドサイトーシス速度が遅くなることから、PKGによるエンドサイトーシス加速機構が生後発達に伴って出現することが明らかとなった。脳幹、またcalyx of Heldのある台形体内側核領域のPKG発現量を聴覚獲得前後で比較したところ、PKG発現量が生後発達に伴って上昇していた。このことから、生後発達に伴うPKG発現量の上昇により、PKG依存性小胞エンドサイトーシス加速機構が出現することがわかった。次に、このPKG依存性加速機構がシナプス伝達にどのように寄与するかを検討した。聴覚獲得後のシナプス前末端内にPKG阻害剤を与え、電流注入により活動電位を発火させた。同時にシナプス後細胞で起こる活動電位を記録し、その追従率を調べた。100 Hzの連続刺激を1分間続けたところ、PKG阻害剤を注入しない場合ではなお70 %以上の確率で追従していたが、PKG阻害剤存在下では追従率は40%程度まで低下した。このことから、PKGによる小胞エンドサイトーシスの加速がシナプス前末端でのシナプス小胞の枯渇を防ぎ、高頻度・高効率のシナプス伝達を実現していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書にて計画していた今年度の目標を達成し、論文にまとめることができた。また次年度の計画もすでに始めており、良好な結果を得られつつあることから。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画として、PKGの下流分子カスケードを明らかにすることを目標とする。生化学的手法および電気生理学的手法を用い、PKGによって機能修飾を受けかつPIP2の代謝に関わる酵素群の中から、小胞エンドサイトーシスに関わる分子を同定する。また小胞エンドサイトーシスとPIP2の関係を明らかにするため、PIP2の可視化と膜容量測定法の併用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は予定していた海外の国際学会での発表を見送ったため、使用額が予定よりも少なくなった。次年度は実験に使う阻害剤等の消耗品や少額機器の購入の他、国内および海外での学会参加に本研究費を使用する予定である。
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