研究課題/領域番号 |
24700406
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
江口 工学 沖縄科学技術大学院大学, 細胞分子シナプス機能ユニット, 研究員 (80470300)
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キーワード | シナプス / 小胞エンドサイトーシス / RhoA / PKG / 膜容量測定法 / パッチクランプ法 |
研究概要 |
本年度の研究では、電気生理学的手法および生化学的手法を組み合わせ、聴覚系巨大シナプス calyx of HeldにおけるPKG依存性小胞エンドサイトーシスの分子機構を調べた。前年度の結果より、Calyx of Heldシナプスにおける小胞エンドサイトーシスのがシナプス前末端内PKGによって加速されていること、PKGはシナプス後細胞からの逆行性シグナルによって活性化していること、PKGの下流ではPIP2が働いており、PKGがシナプス前末端内のPIP2濃度を制御することで小胞エンドサイトーシスを加速していることが分かった。またこのPKGによるエンドサイトーシスの加速が、高頻度・高信頼性シナプス伝達に大きく寄与していることが明らかとなった。本年度は、このPKGによる小胞エンドサイトーシスの加速が、どのような分子機構によって起こっているのかを明らかにした。本研究ではPKGの下流で働く分子の候補として、単量体G蛋白質RhoAとRhoAによって活性化する蛋白キナーゼ(Rhoキナーゼ)に着目し、これら分子の抑制剤および活性剤を用い、パッチクランプ法の応用である膜容量測定法によって小胞エンドサイトーシスの速度を比較した。その結果、RhoA/RhoキナーゼがPKGによって活性化し、小胞エンドサイトーシスを加速していることが明らかとなった。また生化学的手法(ELISA法、質量分析法)により、RhoA/Rhoキナーゼがシナプス中のPIP2量を制御するかを調べたところ、RhoA/Rhoキナーゼの活性化がPIP2量を増大させることが明らかとなった。これらの結果から、PKGによる小胞エンドサイトーシスの加速がRhoA/Rhoキナーゼを介して行われており、またRhoA/Rhoキナーゼがシナプス前末端内PIP2量を制御することで小胞エンドサイトーシスを加速していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書にて計画していた今年度の目標を達成しており、論文にまとめることができた。また次年度の計画にもすでに取りかかっており、予備的な結果をすでに得ていることから。
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今後の研究の推進方策 |
PKGやRhoA/Rhoキナーゼによる小胞エンドサイトーシスの加速はPIP2量の制御によって行われており、PIP2の代謝が小胞エンドサイトーシス速度を決定していると考えられる。このことから、次の段階としてシナプス前末端内PIP2の可視化を行い、膜容量測定法と組み合わせることで、小胞エンドサイトーシス中のPIP2濃度変化を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究推進のため消耗品の購入額が前年度に比べて多くなり、また海外での学会参加のため本研究費を使用し、当初の使用予定額を超過した。しかしながら前年度未使用額が多かったため、次年度使用額が生じた。 次年度は研究推進のための消耗品(各種阻害剤や抗体等)の購入に当てるほか、国内・海外での学会発表に本研究費を使用する予定である。
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