シナプス小胞エンドサイトーシスはシナプス小胞数や前末端構造を維持する上で重要な機構であるが、その制御機構についてはまだ十分には解明されていない。本研究では、PKGを介した逆行性シナプス小胞エンドサイトーシス制御機構の解明を目的とした。申請者は聴覚系シナプスcalyx of Heldにおいて、シナプス前末端内PKGが小胞エンドサイトーシスを加速していることを、電気生理学的・薬理学的手法により明らかにした。また、前末端内PKGはシナプス後細胞から放出された一酸化窒素によって逆行的に活性化すること、PKGがRhoA・Rhoキナーゼを活性化していること、またRhoキナーゼの活性化によってPIP2量が増大し、これによってシナプス小胞エンドサイトーシスの加速が起こっていることを解明した。PKGによる小胞エンドサイトーシスの加速は活動依存的であり、すなわち高頻度・長時間刺激によって作動して、シナプス伝達の信頼性を向上させていることがわかった。一方、聴覚獲得前(生後1週間)の未熟なシナプスではPKGの発現量が少なく、そのためPKG依存性エンドサイトーシス制御は機能していないことが明らかとなった。 PKGがPIP2を介して小胞エンドサイトーシスを制御していることから、シナプス伝達中のPIP2動態と小胞エンドサイトーシスの同時測定を立案した。PIP2のプローブとして蛍光蛋白CYPHRを選択し、PC12細胞を用いて予備実験を行い、CYPHRが機能することを確認した。また、初代培養calyx of Heldにおいて、シナプス前末端へのパッチクランプ記録ができることを確認した。これらプローブ及び初代培養標本を用い、PIP2動態と小胞エンドサイトーシスの同時測定を行う予定である。
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