研究課題
終脳領域の分化した神経細胞で特異的にCTCFを欠損させたマウス(CTCF-cKO)を作製した。CTCF-cKOマウスは、生後の発達異常や行動異常が認められ、生後1ヶ月以内に全て死亡した。CTCF-cKOマウスにおける遺伝子発現変化を網羅的に解析した結果、特にクラスター型プロトカドヘリン(Pcdh)の発現が著しく低下していることが分かった。また、CTCF-cKOマウスでは、生後にヒゲからの入力刺激を受けることで大脳皮質に形成されるバレルと呼ばれる特徴的な構造が全く形成されないことを明らかにした。さらに、CTCFを欠損した神経細胞では、樹状突起の分枝やスパインの形成に異常を示すこと、興奮性後シナプス電流は正常でありながら、発火頻度が減少していることを明らかとした。以上の結果から、分化した神経細胞においてCTCFがクラスター型Pcdhの確率的な遺伝子発現に関与し、機能的な神経回路の発達に関わる重要な因子であることを示すことができた。一方、CTCFを神経幹細胞で特異的に欠損させると、生後1日以内に死亡し、上記の分化した神経細胞で欠損させた場合の表現型と大きく異なった。組織化学的な解析の結果、神経細胞の発生・分化過程で大量の細胞死を引き起こしていること、CTCFを欠損した神経幹細胞でも一部は神経細胞に分化することができることが分かった。これらの結果は、神経幹細胞から神経細胞への分化過程においてもCTCFが重要な役割を果たしていることを示唆する。
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