研究概要 |
脳・神経系は発生段階依存的に性質の変化する神経幹細胞から分化した細胞で構成されるため、その成り立ちを理解するためには、どのようなメカニズムで神経幹細胞の性質変化が引き起こされるかを知ることが非常に重要である。DNAメチル化といったエピジェネティックな変動が神経幹細胞の分化を制御していることが報告されているものの、DNAメチル化変動は領域特異的であり、どのような機構で領域特異的なメチル化変動が引き起こされているのかは未解明である。そこで、本研究では、神経幹細胞の発生段階の進行に伴うメチル化変動領域を特定し、領域特異的なメチル化変化を制御するメカニズムの解明、及び、それに伴う神経幹細胞の性質変化を解析した。 まず、全ゲノムメチル化解析より、神経幹細胞の性質変化に伴うメチル化変動領域を数千カ所同定した。また、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、それぞれの細胞における特異的メチル化変動領域も同定した。これら変動領域に存在する転写因子を探索した結果、アストロサイトではNFI、オリゴデンドロサイトにおいては、Sox10, Mash1の結合配列が優位に出現することを発見した。実際に、神経幹細胞にNFIをレトロウィルスを用いて強制発現させると、アストロサイト特異的遺伝子プロモーター領域のNFI結合領域近傍のDNA脱メチル化が誘導されることを確認した。 また、メチル化パターンによるクラスター解析により、遺伝子発現とは異なるクラスターを見いだした。このクラスターは遺伝子発現によるクラスター解析では現れなかったことより、メチル化パターンの情報を用いることで神経幹細胞の性質変化を同定できることを示唆している。
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