研究課題
平成24年度に行った解析により、ショウジョウバエ脳の広範な領域でのカルシニューリン(Ca2+/カルモジュリン依存性タンパク質脱リン酸化酵素、以下Cn)シグナル経路が睡眠制御に関与することが示唆された。また、Cnを全神経でノックダウンしたハエでは、睡眠量の顕著な減少に加えて、強制的な睡眠除去(断眠)後のリバウンド睡眠量が増加しており、Cnが睡眠量の恒常性維持機構に関与することが示唆された。Cnはシナプス可塑性に重要な分子である。そこで、本年度は、睡眠の恒常性維持機構の一つとして提唱されているシナプス恒常性仮説におけるCnの機能解析を目的として、以下の研究を行った。1) シナプス恒常性仮説の検証 成虫脳に少数存在し、覚醒を司る概日時計ニューロンにシナプス前膜マーカーneuronal synaptobrevinとGFPの融合タンパク質(n-syb-GFP)をGAL4-UAS系により発現させた。このハエを12時間断眠し、n-syb-GFPシグナルを観察した。Bushey et al., Science, 2011の報告と同様に、断眠するとコントロール(断眠なし)に比べて、軸索末端でのn-syb-GFPシグナルの増強がみられた。今後、このハエを用いて睡眠-覚醒に伴うシナプス形態の変化(体積やスパイン数など)を定量化する系を確立する。2) ミトコンドリア動態と睡眠との関係の解析 ニューロンでのミトコンドリア輸送に必要なdMiro(Drosophila mitochondrial rho)を、成虫の全神経で過剰発現したところ、睡眠量の有意な増加がみられた。今後は、睡眠-覚醒に伴うミトコンドリア動態(数、輸送、局在など)の変化を定量する。さらに、Cn機能阻害のミトコンドリア動態への影響を調べる。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
BMC Psychiatry
巻: 13 ページ: 281
10.1186/1471-244X-13-281