研究課題/領域番号 |
24700414
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
上田 洋司 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (40416649)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | モデル動物 / オフラベル薬 / アクチビン / 躁鬱病 / プロテオミクス / miRNA |
研究概要 |
新たな躁鬱治療薬開発を目的として、申請者が作製したアクチビン依存型躁鬱病マウスを用いて、精神病薬としてはオフラベルであるハロフジノンを経口投与した所、脳内のアクチビン下流因子に影響を及ぼす事を見出していた。 脳内アクチビン分子の下流因子及び躁鬱病の指標となるバイオマーカーの探索を推し進めるべく網羅的解析を行った。躁病モデルマウスである脳特異的アクチビン過剰発現マウス、鬱病モデルである脳特異的アクチビン阻害マウス、コントロールとして野生型マウスから、それぞれ海馬脳組織を摘出し、mRNAの発現変動を知るべくDNAアレイ解析を行った。更に、近年の発見によりアクチビンの下流因子である転写因子SmadがmiRNA制御に関わっていることからmiRNAアレイによる解析を行った。その結果、多くのmRNAとmiRNAを変動分子として見出した。通常のプロテオミクス解析では、アクチンなどの細胞骨格やリボソームなど細胞内小器官分子などの存在量の多いものを変動分子として同定する傾向が高い。しかし、実際はキナーゼや受容体分子などの存在量の少ない分子がシグナルカスケードにおいて重要な役割を演じていることは周知の事実である。そこでランダムペプチドカラムを利用し、稀少分子を濃縮した後に、OFFGELを応用した網羅的プロテオミクス解析を行った。脳内アクチビンによってタンパク量の変化だけでなく、タンパク翻訳後修飾を受けることを見出した。翻訳後修飾の具体的詳細を調べるべくPhosTagゲルを用いた解析を行った結果、変動分子郡の一部においてリン酸化状態が変動していることを見出した。 これらの結果は、脳内アクチビンの変動により、mRNA, miRNA, タンパク量, 翻訳後修飾と広範囲な影響を及ぼしていることを示しているだけではなく、これら変動分子郡が躁鬱病に対する新たなバイオマーカーになる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内アクチビン過剰発現マウスとアクチビン阻害マウスを用いた網羅的解析により、mRNAの変動のみならずmiRNAの変動も検出できた。それらデータベースを解析することで脳内アクチビンシグナルがWntシグナルとの関与の可能性も示唆できた。更に、網羅的プロテオミクスの手法を改良する事で、通常2D電気泳動にプロテオミクス解析では同定が困難な膜タンパクを変動分子として多数同定しただけでなく、翻訳後修飾の変化も捕らえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の解析により同定された多数の変動因子郡であるmiRNA, mRNA, タンパクに対して、ハロフジノン投与による影響を検討する。それと同時に、今回の解析により得られた多数のデータに対して、バイオインフォマティクスを駆使したデータ統合を行うことで隠れた変動因子郡を探索する。具体的にはmiRNAの標的予測との整合性、変動郡と同定された転写因子郡の予測下流因子との整合性、変動タンパク郡同士におけるインタラクションMapの作製、などの解析を行う。更に、他種のオフラベル薬の投与を行い、変動分子郡の影響を調べる。 変動分子郡に対して、有意義に影響を及ぼすオフラベル薬が見つかれば、モデル動物への投与を行い、不安行動に対する影響を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬剤の購入:40万円、動物の購入及び飼育費:20万円、一般試薬の購入:20万円、 抗体の購入:40万円、雑誌投稿及び英文校閲費:30万円、
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