新たな躁鬱病治療薬開発を目的として、我々のグループが独自開発した脳内アクチビン依存性躁鬱病モデルマウスを用いて、網羅的解析を行った。野生型(WT)、アクチビン過剰発現マウス(ACM)、アクチビン阻害マウス(FSM)から海馬mRNAを精製し、アレイ解析を行った。更に、アクチビンの下流因子SmadがmiRNAプロセッシング分子に作用する事からmiRNAに対するDNAアレイ解析を行った。その結果、多数の変動因子を同定できた。変動分子に対するパスウェイ解析からWntシグナルやHedgehogシグナルとの関与が示唆された。2D次元電気泳動による網羅的プロテオミクス解析から変動分子を同定していたが、通常の二次元電気泳動では高分子量の分離が難しい。そこで、アガロースゲルによる等電点移動、Blue Native page及びOFFGEL電気泳動法などの多数の網羅的解析を試みた。その結果、OFFGEL電気泳動法による2D電気泳動によって、脳内アクチビン量に依存した多数の等電点移動を観察できた。リン酸化部位が特定されていない分子に対しては、通常のウエスタンブロット法では検討が難しいため、PhosTag電気泳動法による検定システムを立ち上げた。そして、DNAアレイ解析とプロテオミクス解析で共通して変動する分子に対して、リアルタイムPCRによる検定を行ったが、再現よく有意変動する分子は見出せなかったが、DNAアレイ解析で変動幅が大きい分子は、リアルタイムPCRにおいても再現よく脳内アクチビンに依存した変動を示した。この事は、mRNAでの変動と、タンパクレベルでの変動及び、翻訳後修飾による変動は独立した現象である事を示唆している。今後は、オフラベル薬投与による変動分子群の影響を調べ、論文投稿を行うことで、新たな躁鬱病治療薬を再定義する事を目指す。
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