研究課題/領域番号 |
24700420
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
井本 浩哉 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (80464337)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 局所脳冷却 / マイクロダイアリシス |
研究概要 |
当初の予定では初年度に動物実験を優先的に実施する予定であったが、ヒト臨床研究についても実施した。 ネコ実験:冷却の時間的影響を把握するために、セボフルラン麻酔下において体性感覚誘発電位(SEP)に対する局所脳冷却の影響を調べた。15℃の冷却によってSEPの消失は見られなかったが、波形の形状に変化が見られた。また、冷却を止め、復温をさせていくことで、その形状の変化を確認した所、脳表温度の回復と形状の回復にはずれが見られた。砂割り、復温が慣用しても、形状はそれよりも遅れて回復を見せた。 サル実験:左半球の運動野と体性感覚野の手領域を広く覆う冷却デバイスを留置したサルを用いて、覚醒下での運動課題を実施した。課題にはリーチング課題(RT)とDexterity課題(DT)を用いた。右上肢と左上肢それぞれを対象に運動機能を検査したところ、15℃での冷却では、RT、DTのいずれも機能は維持されていた。その後、冷却温度を10℃迄下げた。いずれの課題においてもDurationの延長はみられた。一方、成功率に関しては、DTに置いて有意な低下が見られた。 ヒト臨床研究:H24年度は脳機能マッピングが実施されなかったため、てんかん焦点切除術において、その焦点切除部位に対する冷却を実施した。冷却においては、脳波、脳血流、(マイクロダイアリシスによる)神経細胞の代謝産物の解析を実施した。特に、グルタミン酸とGABAの冷却による変動を解析した所、いずれにおいても冷却によって濃度の低下が起き、その影響は冷却後30分間維持された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物モデルはすでに作成済みであったため、速やかに実験を開始できた。また、臨床研究に関しても、申請当初の内容を踏襲出来てはいないが、神経伝達物質の解析を正確に行うことで、脳機能マッピングに対する適用可能性について検討をすることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究により、局所脳冷却は冷却後も機能低下や神経伝達物質の細胞外濃度に影響を及ぼすことが分かってきた。したがって、脳機能マッピングにおいては、冷却後の影響を最小に抑えるべく、冷却時間・間隔について、動物実験におけるムシモール注入実験と併せて検討する。また、マイクロダイアリシス研究に関して例数を追加するべく、引き続き実施する。 マッピングプローブは試作品に関して、医療機器化を視野にいれるべく、医療機器メーカーとの協力を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初は、備品として脳波フィルタリングソフトウェアや特注ハンドヘルドペルチェプローブを購入予定としていたが、いずれも自作により対応出来たため、高い金額には至らなかった。一方、その他の費用に関しては、投稿論文の別刷り費用が多めにかかったため予定額を超えた。旅費に関しては一度の学会参加で予定よりも少ない額で済んだため、予定額を下回った。 全体的には、物品費の購入が抑えられたことによって未使用額が生じた。この未使用額については、H25年度のマイクロダイアリシス関連の消耗品に充てる。
|