研究課題
これまでにヒトを含め類人猿,マカク類および新世界ザルなど,様々な霊長類ゲノムが解読されてきた.一方でヒトのC型肝炎の原因ウイルスであるHepatitis C virus (HCV)は非A,非B型肝炎ウイルスとして20年以上前に単離されたが,HCVの起源と伝播経路を決定づけられるようなウイルスオルソログは未だ見つかっていない.現在は霊長類肝炎モデルとしてタマリンから単離され,HCVと同じくへパチウイルスとして分類されているGBウイルスBがあり,新世界ザルに感染し肝炎症状を示すことが知られている.また2011-2013年にかけて網羅的な塩基配列の解読からイヌ,ウマ,マウス,コウモリおよびコロブスにおけるヘパチウイルスの配列同定がなされている.しかしながらマカクからヘパチウイルスが同定された報告は未だない.霊長類研究所で蓄積された血液生化学検査のデータを精査すると,マカク類に肝炎マーカー(ALT)値が高い個体が見出されている.これら高ALT値はHCV様ウイルス感染に起因しているのではないかと推測した.マカクへパチウイルスを同定できれば哺乳類肝炎ウイルスとの比較,さらにヘパチウイルス属と哺乳類の分岐年代を比較することが可能になり,長らく不明であったHCVの起源・伝播の解明に繋がり,さらにその病原性と宿主因子の関係を進化学的に明らかにする道を拓く研究成果になると考えている.昨年度に引き続きGPT高値なサンプル血漿からウイルスRNAを抽出し,cDNA合成,増幅,ライブラリを調整後,次世代シークエンサーを用いてウイルスメタゲノム解析を行った.ウイルス様配列にヒットしたシークエンス配列は,SV40, HERV-K,ミドリザル・アカホエザル・アカテタマリン-ERV-L,Adenovirus, クモザル・アカゲザル-ERV-P, HERV-9およびマウスERVであった.
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Archives of Virology
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