研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により惹起される慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の発症機構の解析には、小型実験動物モデルの開発が必須である。しかしながら、未だマウス個体はもとより、マウス由来の細胞でHCVの実験室株であるJFH-1株(HCVcc)を効率よく感染増殖させた報告はない。本研究は、受容体候補分子とHCV ゲノムの翻訳複製を亢進する肝臓特異的なmicroRNAであるmiR-122を不死化マウス肝臓細胞に強制発現させて、HCVに感受性を示すマウス肝臓細胞株の樹立を目的とした。まず、初代マウス肝細胞を、よりアポリポ蛋白質や肝臓特異的マーカー遺伝子の発現等の肝機能が保持されるE6/E7とhTERTを用いて不死化を行った。不死化の過程でmiR-122の発現量が大きく減少していたため、miR-122をレンチウイルスベクターで過剰発現させ、JFH-1株のレプリコン細胞を樹立した。しかしレプリコンRNAの配列解析から、マウス特異的な適応変異は認められなかった。次に、樹立したレプリコン細胞から抗HCV薬によりHCV RNAを除去したcured細胞に対して、4つの感染受容体候補分子(hCD81, hSR-B1, hCLDN-1, hOCLN)を同時に過剰発現させた。その際、マルチシストロニックなレンチウイルスを用いて、異なる抗生物質耐性遺伝子を持つ2つのベクターで2種類ずつ発現させることで安定的に発現可能となり、HCVのエンベロープタンパク質を持つシュードタイプウイルスの侵入が可能であった。さらにHCVccを接種したところ、低いレベルではあるがHCVのゲノム複製とウイルスタンパク質の発現を確認できたが、感染性粒子の産生は検出できなかった。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
PLoS Pathogen
巻: 10 ページ: e1004534
10.1371/journal.ppat.1004534.