研究課題/領域番号 |
24700435
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
三浦 浩美 東海大学, 医学部, その他 (90599523)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HLA / 薬剤副作用 / トランスジェックマウス |
研究概要 |
本研究では、特定のHLA多型と強く相関する薬剤副作用の発症機序解明を目指し、平成24年度は、その基盤となるべき研究材料(HLA発現細胞、及びマウス)の開発を試みた。[1.BAC改変によるHLA発現コンストラクトの作製]マウスH2-K1領域を含むBACクローンの改変、及び様々な制限酵素を用いた複雑なクローニングステップを経て、HLAクラスI トランスジェニック(Tg)マウス作製のベースとなる汎用性の高いコンストラクトを作製した。本コンストラクトは、後のハイスループット化を見据え、ペプチドの結合に重要なα1、α2ドメイン部分を容易にすり替えられるものとなっている。今回、チクロピジン肝障害と強く相関するHLA-A*33:03発現Tgマウスを作製するために、本コンストラクトに、HLA-A*33:03のα1、α2ドメインを挿入したベクターを作製した。[2.各種HLA発現C1R細胞株の樹立]薬剤副作用候補分子の結合アッセイに使用する細胞株を作製するために、piggyBacトランスポゾンをベースとした各種HLA(A*33:03、B*15:02、A*31:01、B*58:01)発現ベクターの作製、及びそれらを用いた安定発現細胞株の樹立に成功した(Miura et al. 2013)。[3.HLA-A*33:03発現Tgマウスの作製]これまで所属研究室で確立してきたPITT法を用いて、HLA-A*33:03 Tgマウスの作製を行った。具体的には、PITT用種マウスの受精卵(homozygote)の雄性前核にHLA-A*33:03発現コンストラクトとiCre-mRNAを注入した。得られた15個体のマウスに関してPCRタイピングを行った結果、1個体のファウンダーマウスを得ることが出来た。更に、次世代への伝搬を試みた結果、得られた8個体のF1のうち、3個体で目的遺伝子が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した際の研究計画と現在の実施状況に関して、細かな違いはあるものの、順調に研究を進展させることができている。具体的な相違点としては、以下の2つが挙げられる。まず1つ目は、HLA発現細胞株の樹立に関して、研究計画書ではTAP欠損細胞(RMA-S細胞:マウスB細胞由来)を使用する予定であったが、実際はHLAクラスIネガティブ細胞(C1R細胞:ヒトB細胞由来)を用いてHLA発現細胞株を樹立している。これまで、HLA分子とペプチドの結合に関する実験では、RMA-S細胞も多く使用されていたが、近年、HLA分子と薬剤の結合評価にC1R細胞が用いられた報告があったため、細胞株を変更した。そのため、今後行う薬剤副作用候補分子の結合アッセイに使用する上で大きな問題はないと考えている。2つ目は、HLA Tgマウス作製に関して、当初はHLA-A*33:03、及びHLA-B*15:02 Tgマウスの作製を本年度中に行う予定であったが、実際はHLA-A*33:03 Tgマウスの作製しか行っていない。本研究で独自に開発したHLAクラスI Tgマウス用コンストラクトは、マウス個体で発現させる初の試みであった。そのため、HLA-A*33:03 TgマウスにおけるHLA分子の発現が確認出来次第、HLA-B*15:02 Tgマウスの作製を行いたいと考えたためである。また、HLA-A*33:03 Tgマウスの作製において、最終的なマウスが得られるまで予想よりも時間を要してしまった。よって、次年度にHLA-B*15:02 Tgマウスの作製を行いたいと考えている。 特に今年度は、本研究の進展(独自のpiggyBacトランスポゾンベクターを用いたHLA発現細胞をハイスループットに作製可能なシステムの確立)を論文として報告できたことは、非常に良かったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究推進方策として、以下2点を行うこととする。1)作製したHLA-A*33:03 TgマウスにおけるHLA分子の発現確認、及びHLA-B*15:02 Tgマウスの作製、2)作製したHLA発現細胞と既知のペプチドを用いた結合アッセイの確立を目指す。1)のHLA-A*33:03 TgマウスにおけるHLA分子の発現確認においては、マウス脾臓細胞を単離し、HLA抗体(IM0107, BD社)、及びヒトβ2m抗体(551337, BD社)を用いてFACSによりHLA分子の発現の確認を行う。本HLA抗体を用いることによって、HLA重鎖がβ2mと結合している場合(つまりHLA分子が正確なコンフォメーションを形成しているとき)にのみ、検出することが可能となる。また、薬剤副作用の影響が現れる臓器においても組織切片を作製し、その発現の確認を行う。HLA-B*15:02 Tgマウス用コンストラクト作製の為に、HLA-B*15:02を保持する細胞株からα1、α2ドメイン領域を増幅し、独自のHLAクラスI Tgマウス用コンストラクトに導入する。本年度と同様にPITT法を介したTgマウス作製を試みる。2)のHLA発現細胞を用いた結合アッセイに関しては、まずはアリル特異的に結合しうる既知のペプチドを用いて、HLA分子の発現をFACSにより検出する。また薬剤副作用候補分子におけるHLA分子との結合についても検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究計画遂行のためには、主に実験動物の作製・維持・繁殖に必要な経費、ペプチドや薬剤副作用候補分子の合成に経費を要する。具体的には、トランスジェニックマウスの作製(25万円×1コンストラクト)、実験動物飼育施設の利用経費(HLA Tgマウス(2種類、各10ケージ維持)、ケージチャージ43円/日×10ケージ×365日×2ライン)として32万円、ペプチドの合成(HLA-A*33:03、及びHLA-B*15:02について3種類ずつ。約8-12アミノ酸×9種類=5万円×9=45万円)、及び低分子化合物の合成(現在、見積もり依頼中)に使用したいと考えている。
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