研究課題/領域番号 |
24700435
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
三浦 浩美 東海大学, 医学部, 特定研究員 (90599523)
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キーワード | トランスジェックマウス作製 / HLA発現確認 / 肝障害 |
研究概要 |
本研究では、特定のHLA多型と強く相関する薬剤副作用の発症機序解明を目指し、今年度は、(1)HLA-A*33:03トランスジェニック(Tg)マウスのコントロールとなりうる他HLAアリルTgマウスの作製、(2)独自の手法で作製したHLA-A*33:03 Tgマウスの評価を行った。(1)今回のHLA Tgマウスに関しては、HLA-A*31:01 (カルバマゼピンでスティーブンスジョンソン症候群を生じる)を有するマウスの作製を試みた。独自のTgマウス作製用種マウスから採取した受精卵(154個)にHLA発現コンストラクトを顕微注入した。その結果、16個体の産仔数のうち、2個体が目的のTgマウスであることが明らかとなった。(2) HLA-A*33:03マウスにおけるeGFP遺伝子(HLA遺伝子とbicistronicに発現)の発現、及びHLA分子の膜表面上における発現を確認するために、マウス脾臓細胞を単離し、ラベル(Alexa647)化した抗HLA抗体(B9.12.1)による検出を試みた。その結果、HLA TgのみでeGFP遺伝子の発現を確認することが出来た。抗体による検出については、野生型マウスにも抗体が反応してしまったことにより期待通りの結果は得られておらず、現在検討中である。また、HLA-A*33:03 Tgマウス個体へのチクロピジン投与による経時的なGPT、GOT値の変化を観察するために、薬剤投後、翌日、翌々日に、マウス頬から血液を採取し、得られた血漿成分におけるGPT、及びGOTの測定を行った。その結果、GPT活性値に大きな変化は見られなかったものの、GOT活性値に関しては、野生型で高くなる傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで、昨年度の研究推進方策として挙げていた内容、(1)他HLAアリルTgマウスの作製、に関してはほぼ達成しているものの、(2) HLA分子の発現確認、(3) HLA発現細胞を用いた結合アッセイ、に関しては期待通りに進められていない状態にある。(1)今回作製した HLA-A*31:01 Tgマウスは、HLA-A*33:03 Tgマウスと互いにコントロールとして、解析に用いて行きたいと考えている。(2)HLA分子の発現確認においては、使用可能な抗体が限られているため(作製したマウスのHLA分子はヒト-マウスのキメラ分子であること、また緑色蛍光eGFP遺伝子を有していることによる)、抗HLA抗体(B9.12.1)を直接Alexa647でラベルする必要があった。その結果、予想に反して、HLA Tg、及び野生型のいずれにおいても、Alexa647による検出が確認された。この理由として、抗HLA抗体がマウスH2にもクロスしてしまっている可能性、またはラベル分子等がマウスに存在する何らかの膜表面上のタンパク質に非特異的に結合してしまっている可能性が考えられる。そのため今後は、hβ2ミクログロブリン抗体を用いて、HLA分子の発現確認を行っていきたいと考えている。一方で、HLA-A*33:03 Tgマウスについては、予定を変更して実際にチクロピジン投与による影響の検討を進めた。以上の理由により、(3)を着手するには至っていない。今後、作製したHLA Tgマウスの評価を行いつつ、遅れている部分についても進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究推進方策としては、独自に作製したHLA Tgマウスの評価と薬剤副作用モデルマウスとしての有用性を検証していきたいと考えている。具体的には、1)FITC-HLA抗体、及びヒトβ2m抗体を用いたFACSによるHLA分子の発現の確認、及び各HLA拘束性のキラーT細胞の誘導能を検証する。その際、アリル特異的に結合しうる既知のペプチドを用いて、マウス、更に摘出した脾臓細胞への免疫を行った後、IFN-γ産生能等を調べる。また、2)各Tgマウス個体への薬剤投与による影響を検証するために、HLA-A*33:03 Tgマウスはチクロピジン、HLA-A*31:01 Tgマウスはカルバマゼピンを腹腔内投与し、マウス頬から血液を採取し、得られた血漿成分を用いて、GPT・GOT値の測定、また、HLA-A*31:01に関しては、ELISAによりCRP値の測定も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の予定を一部変更したため、実行を遅らせた実験に要するコストに関して、次年度に繰り越して使用したいと考えている。また、最終年度に使用するマウス数が大幅に増えることが考えられたため、計画的に次年度への繰り越しを行った。 本年度の研究計画遂行のためには、主に測定用試薬、実験動物の維持・繁殖に必要な経費、ペプチド分子の合成に経費を要する。また、結果が出次第、研究成果の発表、及び論文投稿にも経費を使用したいと考えている。具体的には、測定用試薬(2種類、約12万)、実験動物飼育施設の利用経費(HLA Tgマウス(2種類、各10ケージ維持)、ケージチャージ45円/日×10ケージ×365日×2ライン)として33万円、ペプチドの合成(HLA-A*33:03、及びHLA-A*31:01について3種類ずつ。約8-12アミノ酸×9種類=5万円×9=45万円)、に使用したいと考えている。
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