研究課題
本研究では、特定のHLA多型と強く相関する薬剤副作用の発症機序解明を目指し、今年度は、抗てんかん薬のカルバマゼピン感受性アリルであるHLA-A*31:01トランスジェニック(Tg)マウスの系統作製とその解析を目指した。所属研究室独自の手法であるPITT法を用いてC57BL/6N遺伝的背景のHLA-A*31:01 Tgファウンダーマウス2個体(共に雄)が得られていたが、C57BL/6N雌と交配した結果、いずれのファウンダーマウスからも子孫が得られず、別個体の雌を購入して交配を続けても、全く妊娠することがなかった。PITT法を用いてHLA-A*33:03 Tgマウスを作製した際には同様の現象は確認されず(正常に次世代にトランスジーンを伝搬する)、HLA以外の遺伝子のTgマウス作製時においても2匹のファウンダーマウスが共に不妊雄である経験がないことから、これはHLA-A*31:01 Tgマウス特有の現象である可能性も考えられた。そこで、ファウンダーマウス精巣のパラフィン切片を作製・観察し、精子についても確認を行ったところ、精巣は両マウス共に小さいものの組織的な異常は確認できなかった。また、精子数は少ないが運動能を有するものであった。今後、個体に戻す可能性を考慮して(受精能の有無は不明であるが)、精子の一部は凍結保存した。また、肝臓と大腿筋からcDNAを合成し、現在mRNA遺伝子発現を確認しているところである。HLA-A*33:03 Tgマウスに関しては、引き続きチクロピジン投与による肝障害の影響を調べたものの、GPT、GOT値ともに野生型との有意差は確認できなかった。チクロピジンそのものではなく、その代謝産物が発症に直接関連する可能性も考えられる。
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BMC Genomics
巻: 16 ページ: 274
10.1186/s12864-015-1432-5