研究課題/領域番号 |
24700439
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
樋口 裕一郎 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (00596281)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヒト肝蔵マウス / ヒトiPS細胞 / 胆管上皮細胞 |
研究概要 |
本研究は肝再生能力を有する胆管上皮細胞をヒトiPS細胞より誘導し、これを用いてヒト化肝臓マウスを作成することを目的とする。平成24年度の研究計画として①ヒト化肝臓マウスからのヒト胆管上皮細胞単離と肝再生能力の確認、②ヒトiPS 細胞より胆管上皮細胞を分化誘導する培養系の確立を行った。 ①の前検討としてマウスの肝臓より、胆管上皮細胞を単離する技術を確立した。胆管上皮細胞のマーカーであるEpCAM分子を指標として磁気ソーティングを行ったところ、胆管上皮細胞を効率よく単離することに成功した。この技術を既存のヒト化肝臓マウスに応用し、摘出したヒト化肝臓マウス肝臓よりヒトEpCAM陽性の胆管上皮細胞を単離した。これを肝傷害マウスにシリアル移植して肝再生能力を検討したところ、コントロール(未濃縮細胞群)に対して著しい生着率の上昇は見られず、当初の研究仮説とは異なる結果となった。 ②については既報の無血清分化誘導法(Nakamura et al., Cellular Reprograming 14 171-185, 2012)をもとに、0.5M EDTA処理によって効率よく胆管系譜への分化を誘導する方法を確立した。胆管系譜への誘導を行った群では細胞の形態が繊維状に変化し、既知の胆管マーカー遺伝子を発現していた。これらの細胞について肝傷害マウスへの移植を試みたところ、肝臓への生着は見られたが正常な肝実質、胆管様の構造は形成されず、期待された肝臓再生能力は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画自体は当初の予定通りに進捗している。しかし得られた結果が全てネガティブであるため、当初の作業仮説をもとに作成した研究計画に沿って研究を行っても、最終目標であるヒトiPS細胞からのヒト化肝臓マウス作成を達成することは非常に困難であると思われる。したがって、本年度の研究方針については大幅な変更を行い、改めて目標達成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度中に肝再生能力を示さないヒトiPS細胞由来肝臓細胞と、肝再生能力を示すヒト肝臓細胞においてマイクロアレイ解析を行い、その遺伝子発現パターンを比較した。結果、ヒトiPS細胞より誘導した肝臓細胞の遺伝子発現パターンは胎児期の肝臓細胞に近く、成人の肝細胞と比較しても未熟な段階にあることが推測された。この結果をもとに、ヒトiPS細胞由来肝細胞において発現量の少ない遺伝子をスクリーニングし、それらを強制発現することで肝細胞の成熟化が誘導されるか、また肝傷害マウス生体内における肝再生能力の獲得が見られるかを検討する。 また別検討として、ある種の肝臓癌細胞に、生体内における肝再生能力があることを見出した。同細胞を肝傷害マウスに移植すると肝実質、胆管様の構造を形成し、肝実質様細胞では代謝酵素等の発現も確認された。現在のところ生着率の低い点が問題となっているが、上記マイクロアレイ解析等の結果も参考に、同細胞を遺伝子改変することで生着率の向上が見られるかを検討する。 後述した肝臓癌細胞については当初の研究計画中には記載のない細胞であるが、ライン化され試験管内での維持培養が可能であるという点で、ヒト化肝臓マウス作成のための細胞源として非常に魅力的である。この細胞の特性を明らかに出来れば、その情報はヒトiPS細胞を細胞源とするヒト化肝臓マウスの作成研究にもフィードバックすることが出来る。本年度はこれらの解析、検討を進めることで、研究目標の達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究内容は各細胞における遺伝子の強制発現、およびノックダウンが主となる。したがって、それに伴うベクターの購入や、分子生物学実験の消耗品、細胞培養実験の消耗品等購入に研究費を使用する。
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