研究概要 |
初年度の研究において当初ヒト化肝臓マウスを作製するための細胞源として想定していたヒトiPS細胞由来胆管上皮細胞が、生体内における肝再生能力を持たないことを確認した。これを受けて研究内容の大幅な軌道修正を行い、ヒトiPS細胞に限らず、肝再生能力を有する培養細胞のスクリーニングを行った。 検討の結果、ヒト肝癌細胞株の一種であるHepaRG細胞に肝再生能力があることを見出し、これを報告した(Higuchi et al., Xenobiotica, 2013)。HepaRG細胞を肝傷害モデルマウス、TK-NOGマウスに移植し、その生着性を検討したところ、移植したHepaRG細胞は生体内において肝実質細胞、もしくは胆管上皮細胞からなるコロニーを形成した。HepaRG細胞由来肝実質細胞では薬物代謝関連因子(CYP3A4、MRP2)の発現も確認され、生着率の高い個体では血中へのヒトアルブミン放出も観察された。これらの結果はHepaRG細胞がヒト化肝臓マウス作製のための細胞源として有用であることを示している。 HepaRG細胞はライン化された培養細胞株であり、試験管内で容易に増やすことが出来る。これを用いて均質なヒト化肝臓マウスを安定生産することが出来れば、ヒト肝臓疾患や薬物代謝に対する非常に再現性の高いin vivo評価モデルを提唱することが出来る。今後の課題としてマウス肝臓中に移植したHepaRG細胞の生着率向上が挙げられる。細胞移植の方法や肝傷害モデルマウスの改善を行うことで、より置換率の高いHepaRG細胞由来ヒト化肝臓マウスモデルを作成する技術を確立したい。
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